【記者の目】日大選手会見 勇気ある発言の意義は大きい
5月6日のアメリカンフットボールの定期戦で悪質なタックルを行い、関学大の選手を負傷させた日大3年の宮川泰介選手(20)が22日、都内の日本記者クラブで記者会見した。井上奨コーチを通じて内田正人前監督(62)から指示を受け、思い悩んだ末に拒否できず、精神的に追い込まれた状況で指示に従って反則行為に及んだことを告白した。また、試合後に個人として被害者側に謝罪しようとしたものの、前監督から止められていたことも明らかになった。
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悪手に悪手を重ねる日大側の不誠実な対応に比べて、宮川選手は勇気ある告発をした。自責の念に葛藤しながら「真実を話さないといけないと思い、ここにいます」と言った人間らしい姿に、この問題を取材していてようやく少し救われた気がした。
もちろん加害者としての責任は免れようがなく、発言内容全てが事実かどうかはわからない。しかし、20歳の青年が社会的制裁を受ける可能性があるにもかかわらず顔も氏名も出し、真相究明の端緒を白日の下にさらした。前監督が問題の核心をはぐらかし続ける中で、その意義はあまりにも大きい。
反則行為の指示は言うに及ばず、陳述の中で示された「相手がケガした方が得」「定期戦がなくなってもいいだろう」などという、対戦相手への敬意がみじんもない日大首脳陣の様子に耳を疑った。アメフットという緻密な組織戦術が求められる競技では絶対的な指揮系統は不可欠かもしれない。だからこそ、指導者には高潔な人間性が求められるのではないか。
双方の青年の人生を狂わせ、スポーツの名に泥を塗ってなお「認識の乖離」と加害選手に責任を押しつけるなら、日大はもはや社会の成員としての常識から“乖離”していると言わざるを得ない。(デイリースポーツ・藤川資野)