栃ノ心、自力V消滅も大関“不変” 鶴竜に痛恨…土俵に拳打ちつけた「悔しい」
「大相撲夏場所・14日目」(26日、両国国技館)
関脇栃ノ心は横綱鶴竜との1敗同士の決戦にすくい投げで屈した。2連敗で自力優勝が消滅したものの、初日から12連勝した評価は変わらず、昇進を預かる審判部の阿武松部長(元関脇益荒雄)は千秋楽に意見をまとめ、大関として推挙する意向を明かした。鶴竜が単独トップに立ち、横綱白鵬は関脇逸ノ城の上手投げに屈して3敗目を喫し、41回目の優勝の可能性が消えた。千秋楽に栃ノ心が敗れるか、栃ノ心が勝っても鶴竜が勝てば本割で鶴竜の2場所連続5度目の優勝が決まる。栃ノ心が勝って鶴竜が負ければ、優勝決定戦にもつれ込む。
激闘及ばず、栃ノ心は投げられ、前からバッタリと落ちた。土まみれの拳を握り、1回、土俵に打ちつけた。汗か涙か、充血した目から落ちるものがあった。
優勝を占う鶴竜との相星対決。もろ差しを許すと、外四つで抱え出た。つり上げる場面もあったが攻め切れない。苦しまぎれの投げも不発。生命線の上手が切れ、命運は尽きた。この日は母国ジョージアの「独立記念日」。全国民の記念日にお祝い星を逃した。「悔しい」と帰り際、声を絞り出した。
前日、連勝が12で止まった際、右手首を痛めた。朝、病院に行き患部にテーピングを巻き出場した。「大丈夫」と言ったが、重圧に耐え続けた肉体は悲鳴を上げていた。
横綱の壁に阻まれたが、力勝負の堂々「大関相撲」だった。12日目にはV争いを演じた白鵬を初撃破した。
阿武松部長は「私の中の評価は変わらない。(3連敗になっても)横綱を倒している。私の気持ちは変わっていない」と不変の評価を明言。千秋楽に審判部で会議をして意見をまとめ、八角理事長(元横綱北勝海)に昇進を諮る臨時理事会の開催を要請する見込みだ。30日に「新大関栃ノ心」が誕生する。
優勝決定戦の可能性はある。「最後なので気合を入れて思い切って行く」。最後まで闘志を切らさず13勝目をもぎ取るのみだ。