野中生萌、初世界女王で涙 抜群安定感で登り詰めた頂点
「スポーツクライミング・W杯・決勝」(18日、ミュンヘン)
準決勝と決勝が行われ、女子は2位に入った野中生萌(21)が初の年間総合優勝に輝いた。3年ぶり5度目の女王を目指した野口啓代(29)=ともにTEAM au=は2位。男子の年間総合はイエルネイ・クルーデル(スロベニア)が制し、楢崎智亜(22)=TEAM au=は2位で2年ぶり王者奪回はならなかった。
最後の課題を登り切ると、こみ上げる感情を抑えられなかった。野中は決勝で、総合優勝を争っていた野口を上回る2位を確保し、悲願のタイトルを手中にした。マットに座り込んで肩を震わせ「その瞬間は、すごくうれしかった」と感極まった。表彰式では晴れやかな笑みを浮かべた。
6人で争う決勝は、4番目に登場した。3番目の野口が課題を次々と成功させるのは会場の歓声で分かった。野中は「1撃(1度目のトライで完登)か2撃(2度目のトライで完登)で登らないとチャンスがない」と自らに言い聞かせ、第2~4課題は全て一発でクリアした。
日本代表の安井ヘッドコーチが「素早い動きと、爆発的なパワーが魅力」と語る21歳のニューヒロイン。本人は波があった精神面で成長できたと実感する。これまでなら「私はまだ…」と試合中にも弱気の虫が顔を出すこともあったが、この日は「私もできる」と強気の姿勢を貫けた。
今季のW杯は優勝1度で、それ以外の6戦は全て2位という安定感が光った。次の目標は、9月の世界選手権(インスブルック)。前回大会2位の雪辱を果たす機会でもある。野中は「出るからには上を目指して頑張りたい」と“2冠”への意欲を隠さなかった。