柔道好勝負に水差した?“不明瞭ジャッジ” 井上康生監督「非常に残念」
「アジア大会・柔道」(30日、ジャカルタ)
男子73キロ級決勝で、リオデジャネイロ五輪金メダリストの大野将平(26)=旭化成=が、17年世界選手権銅メダルの安昌林(24)=韓国=との11分9秒の死闘の末、内股による技ありで勝利し、金メダルを獲得した。
試合時間11分を超える死闘は不明瞭な終わりを迎えた。両者ポイントが入らないままゴールデンスコア方式の延長戦に突入し、大野が内股、安が担ぎ技を狙う根性比べに発展。10分50秒過ぎに大野が内股を仕掛けると、相手の体の側面が一瞬畳についたようにも見えたが、腹ばい姿勢にも見えたため、主審はポイントを与えずに続行させた。しかし、その後ジュリーが「技あり」と認め、不思議な形で決着がついた。
激闘を制した大野は「(あと)10分、20分でも戦ってやろうと思ってました。稽古の質と量、根性では絶対負けないと思ってた」とプライドをにじませつつ、決着の場面については「投げられはしなかったが、ポイントが入って、まあ最後は審判に助けられたかなとは思う」と振り返った。
敗れた安は、試合直後は納得できないとばかりに両手を挙げてアピールしていたが、「逆に僕が大野選手の立場だったら『技あり』とアピールしたと思うし、これが結果と受け入れるしかない」と話し、「泥臭く根性勝負に持っていこうと思っていたが、僕のメンタルが弱かったです」と認めるしかない様子だった。
ただ、お互い闘志を前面に出して得意技を繰り出し合い、世界最高峰とも言えるハイレベルな好勝負を繰り広げただけに、不明瞭なジャッジが水を差す結果となった。
日本男子の井上康生監督は「王者らしく帰ってきてくれたと思える試合だった」と大野を評価する一方で、不可解なジャッジに対しては「お互いの国の威信を懸けた素晴らしい戦いだったが、あの結末は非常に残念。安君もモヤモヤとした気持ちになったのではと思う」と、柔道家の立場からは苦言を呈した。
その他の試合でも、欧州を中心に行われている普段のワールドツアーとは「技あり」の定義や指導をとる早さが異なっており、選手が混乱する場面も散見された。
井上監督は「大げさに言うと、(普段の試合と)種目が違う感じ。指導の取り方も反則の取り方も違う。アジアと欧州で柔道の考え方の違いもあるかもしれない。常に世界の目線で戦っていた部分があるので、難しいところがある」と、翌日以降の戦いに向けて警戒していた。