「大相撲秋場所・５日目」（１３日、両国国技館）

　左大胸筋負傷などで８場所連続休場から進退を懸ける横綱稀勢の里が幕内正代を上手投げで退け、初日から５連勝に伸ばした。もろ差しを許し後退したが土俵際、残して４日連続の逆転星。視察した横綱審議委員会（横審）の北村正任委員長（毎日新聞社名誉顧問）は序盤戦を高評価し、引退危機脱出へ前進との見解を示した。鶴竜、白鵬も勝ち３横綱全員が全勝キープ。大関とりの関脇御嶽海も大関栃ノ心に完勝し無傷５連勝。大関高安、平幕北勝富士、嘉風を含む７人が全勝でトップに並ぶ。

　ヒヤヒヤさせて最後は勝つ。これぞヒーローだ。“逆転の稀勢の里”がこの日も国技館を大熱狂させた。

　右から抱えて正代を組み止めた。相手の右を封じて左をねじ込み、右上手も取った。盤石の形で寄ったが決めきれない。回り込まれて両差しを許してピンチに館内は悲鳴。その瞬間、生命線の右上手に全力を込め、豪快に相手を投げ捨てた。

　土俵上では悠々ときびすを返し、“どや顔”も出た。初日から５連勝は新横綱Ｖを果たした昨年春場所以来、９場所ぶり。勝つたびに自信と余裕が顔、体からあふれ出ている。

　支度部屋では落ち着いていたかと問われ「そうですね」と淡々。５連勝にも「まあ明日またしっかり集中して」と緩めない。序盤の手応えには「一日一番しっかり集中してやるだけ」と連日同様の言葉を繰り返した。

　２日目から４日連続、ピンチをはね返しての劇勝。理想は横綱相撲ながら、今場所は結果が大事。視察した横審の北村委員長は「すごく気持ちが伝わってくる。あきらめない。自分で自分を奮い立たせてというのを感じる」と気迫を絶賛した。

　８場所連続休場中、出場した４場所は途中休場に追い込まれている。復活へのカギを握っていた序盤を突破したことが一番の評価。「（場所前は）３日負けたらやばい気がしていたけど１つ障害をクリアした気がする。（危機を脱出した）そういう感じはある。一番心配だったことはクリアした」と、進退危機脱出へも一歩前進との見解を示した。