柔道きょうだいV阿部一二三&詩、幼少期はUNOでケンカ
「柔道・世界選手権」(21日、バクー)
女子52キロ級決勝で、18歳の阿部詩(うた)=兵庫・夙川学院高=が前年女王の志々目愛(了徳寺学園職)に延長戦、内股による一本勝ちで初優勝した。男子66キロ級では、兄の阿部一二三(21)=が2連覇し、日本初の男女きょうだいによる同時優勝を果たした。
お互いに刺激を与え合う仲良しきょうだいが、ついにそろって世界一になった。詩にとって一二三は尊敬する兄で、常に背中を追ってきた存在。昨年世界王者になったときは「あれは誰だろうと思うくらいすごかった。技に入る勇気や勝負根性は見習いたい」と刺激を受けた。一方、一二三も妹が発奮材料になっており、「努力しているところもそうだし、あの若さで世界で戦って結果を残すのはすごい。負けていられない」と話す。
3人きょうだいの次男と長女。両親に競技経験はなかったが、テレビで柔道に惹かれた一二三が小学1年の時に地元神戸の「兵庫少年こだま会」に通い始めた。3歳下の詩は当初、兄に付き添って見学しているだけだったが、練習風景を見ているうちに活発娘の血は騒いだ。
「すごい楽しそうで『やりた~い』って。最初はお父さんから『女の子やからピアノとかにしとき』とかって、めっちゃ止められたんですけど」(詩)
すぐに全国レベルで活躍したわけではないが、2人の才能は徐々に開花した。まずは一二三が中学2、3年で全国大会を連覇。詩も中学3年で初めて全国王者となった。ともにシニア転向後は、瞬く間に世界の頂点に駆け上がった。2人が共通して得意とする「袖釣り込み腰」は今や世界で一本を取る阿部家の“代名詞”だ。
普段は至って普通の兄と妹。小学生時代はカードゲームの「UNO」で遊んでいてよくケンカをした。「(リーチの時に)『UNO』って言わないとあかんのに『言ってへんやん!』ってケンカになって、お母さんに取り上げられていました」(詩)。お互い大きくなるにつれて、きょうだいゲンカもしなくなった。
仲はいいが、必要以上に干渉はしない。今は神戸と東京で離れて暮らしているが、お互い試合で結果を出す度に「おめでとう」とそっけない連絡を取り合うくらい。
詩は兄を追って来春から日体大に進学するが、一二三から進路について助言することもなかったという。詩から電話で「日体大に決めた」と簡単な報告があり、「ああ、そうか。一緒に頑張ろう」と答えただけだ。
それでも来年1年は同じ拠点で練習を積むことになるだけに、「ちょっとうれしかったかな」と一二三。「一緒に柔道できるのは小学生以来なので。困ったことがあれば妹を助けてあげたいし、きょうだいでまた一段と強くなれると思う」。
2020年東京五輪でも2人の階級は同日開催。お互いの相乗効果でアベック金メダルを目指す。