貴乃花親方に出勤命令 引退届提出も書類不備…「退職届が必要」協会受理せず
大相撲の貴乃花親方(46)=元横綱=が25日、日本相撲協会に「引退届」と弟子らの千賀ノ浦部屋への転籍願を提出した。しかし協会側は書類の不備を理由に受け付けず、再提出を命じた。同日、都内で会見した同親方は引退理由について、内閣府へ提出した告発状の内容に関し事実無根と認めるよう協会から要請され、認めなければ一門に所属できず廃業となるとの圧力を受けたと説明したが、協会側はこの主張も真っ向否定した。
貴乃花親方の突然の引退会見だった。午後5時2分から約1時間27分、激白した。
「告発状の内容が事実無根な理由に基づいてなされたものであることを認めないと親方を廃業せざるを得ないなどの有形・無形の要請を受け続けてまいりました」と、引退理由を自らの口で語った。
3月に内閣府に提出した協会のガバナンスを問う告発状の内容は事実と主張。協会から事実無根と認めろと要求され、断れば一門に所属させず、廃業となるよう圧力を受けたことを訴えた。
弟子への愛、協会改革へ思いが志半ばで断たれた無念を吐露した。しかし午後8時半頃、協会で記者対応した芝田山広報部長(元横綱大乃国)がこの主張をことごとく突っぱねた。
「引退届」に関し、「年寄が退職する場合は『退職届』が必要」と受理せず。弟子の転籍願も書類に千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)のなつ印がなく不備だったことを明かした。いずれも再提出してもらった上で受理するか判断。その後、理事会にかけるか決定する、と説明した。
「有形・無形の圧力」も否定。「一門に所属しない親方は部屋を廃業しないとならない旨の決定がなされたとあるが、そのような事実も一切ない」とした。
7月の理事会で全親方は5つある一門のいずれかに所属することを決定し、調整してきた。旧貴乃花一門と無所属の親方衆は二所ノ関、出羽海の各一門に移籍が内定していたが、貴乃花親方だけは未定のままだった。
貴乃花親方は秋場所の後半に初めて話を聞いたと会見で述べたが、同部長の認識と食い違う。かつての一門の盟友、阿武松理事(元関脇益荒雄)が8月上旬から「弟子もいることだから、一門に所属して一緒に頑張ってやろう」と何度も説得を試みたと確認している。
「真実を曲げて、告発は事実無根だと認めることは私にはできません」。貴乃花親方はこの日朝、引退を決断し、午前、弟子らに決意を伝えた。涙を流す弟子もいた、という。自らの騒動で弟子たちを動揺させなくないとの思いで「最善の道。苦渋の決断」だった。
しかし協会と対立し続け、最後に下した幕引きにまで“待った”がかけられた。芝田山部長は「明日は番付編成会議がありますよね。いち協会年寄としては明日も出ていただくのが通常であると私は思います」と26日以降も“出勤”を求めた。
15歳で角界入りし31年。22度の優勝を誇り日本中を歓喜させた平成の大横綱の末路が悲し過ぎる。