元横綱・日馬富士 悔いなし涙なし“太刀持ち”白鵬“露払い”に鶴竜を従え引退相撲
大相撲で幕内貴ノ岩に対する傷害事件の責任を取って昨年11月に引退した、元横綱日馬富士のダワーニャム・ビャンバドルジ氏(34)の引退相撲が30日、東京・両国国技館で行われた。約400人がはさみを入れ、最後に師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)が大銀杏(おおいちょう)を切り落とした。貴ノ岩への暴行により引退への道を選んだが「第二の人生が始まる。泣くわけにいかないので」と笑顔で踏み出していった。
断髪を終えたビャンバドルジ氏は、土俵へそっとキスをして別れを告げた。「悔いのない素晴らしい18年間だったなと思う。始まりがあれば終わりも来る。若いときに神様から力というものを与えられた。それを返すときがきた」。涙はない。第二の人生への希望の旅立ちに見えた。
昨年秋場所で9回目の優勝を飾ったばかり。まだやれると思っていたのではないか。恨み言のひとつでも言いたいのではないか。
だが、そんなことはなかった。「誰かを恨んだり、何かしたかったとかまったく思わない」と語り、「感謝とはこんな素晴らしいのか、と思うくらい感謝している。すべてのことに」とすがすがしい表情で続けた。
貴ノ岩の師匠、貴乃花親方(元横綱)が日本相撲協会に退職を届け出た。1日にも同親方の退職が決まるとみられる。そのことには「私は相撲協会から離れているので、しゃべる権利はない」と穏やかに対応した。
今後は見識を広げるため世界を旅する計画を立てている。「歴史ある国やヨーロッパ、アジアやインドとかね」。9月に幼稚園から高校まで一貫の「新モンゴル日馬富士学園」を開校。教育者としてもスタートしている。「あいさつも日本語を取り入れている。のちに、ぼくの高校から相撲取りが生まれれば」と夢を語った。