引退決断の愛ちゃん、迫っていた“タイムリミット” 若手台頭で5度目五輪は壁高く

 卓球女子で“愛ちゃん”の愛称で親しまれたロンドン、リオデジャネイロ五輪メダリストの福原愛(29)=ANA=が21日、自身のブログを更新し、現役引退を発表した。リオデジャネイロ五輪後は競技を休養し、台湾の江宏傑選手と結婚。第1子となる長女も誕生していた。「選手としての立場を、ここで一区切りつけることを決意しました」と、東京五輪まで2年を切る中で、第一線から退くことを表明したが、決断までのタイムリミットは迫っていた。

 日本卓球協会は9月に同五輪の代表選考基準を発表。男女ともに20年1月発表の世界ランキング上位2人をシングルスの代表候補に選出する。団体戦要員の3人目は、世界ランキング、ダブルスなどの実績や相性を考慮し、メダルを取れる選手を強化本部で推薦する、となった。福原が代表入りするには、来年1月の全日本選手権に出場し、力を示して、ナショナルチームに復帰。ツアーを回り、世界ランクの上位に駆け上がる必要があった。

 ただ、ハードルはあまりにも高い。日本女子のレベルはこの2年で格段にアップした。現在日本女子は世界ランク4位の石川佳純を筆頭に、8位に伊藤美誠、9位に平野美宇と3人がトップ10入り。40位以内に9人が名を連ねている状態だ。伊藤、平野は国際大会でも結果を残しており、2年のブランクのある福原の返り咲きは厳しい状況だった。

 結婚当初こそ「2016年のリオオリンピックから二年が経ち、結婚や出産を経験し、日々育児に励みつつも、競技のことが頭から離れることはありませんでした。3歳から卓球を始め、約26年の間、多くのことを学ばせていただきました。とてもおこがましく身勝手かもしれませんが…これまでの私は、これからも卓球界を引っ張っていくため、子育てをしながら競技を続ける必要があると思っていました」と、復帰への意欲もにじませていたが、後輩たちの躍進に考えも変わっていった。

 「皆様がご存知の通り、この2年間で次世代の選手達が大きな成長を遂げ、日本の卓球界全体が以前より盛り上がってきました。とても嬉しく感じるのと同時に、知らない内に私自身で勝手に感じていた肩の重みがすっと抜けるような感覚があり、私が選手としてできることはやり切った、頑張り抜いた、という思いが強くなり、自分が選手としての立場でやるべき使命は果たせたかな、と感じるようになりました」と、自身の役割の終わりを悟ったという。

 今後は選手とは別の形で卓球界に恩返していくという。天才卓球少女として名を馳せ、日本の卓球の象徴だった“愛ちゃん”が、ついにラケットを置いた。

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