稀勢の里休場も 92年以来横綱が初日から惨連敗 質問には無言…進退問題再浮上も
「大相撲九州場所・3日目」(13日、福岡国際センター)
悩める稀勢の里が若武者にのみ込まれた。左差し狙いも北勝富士のおっつけで完全に封じられ、突き合いに応戦。押し込む場面もあったが喉輪で起こされると右から強烈に土俵にたたきつけられた。
ゴロリ、横転しあおむけになり、しばらく動けずぼう然。支度部屋での質問はすべて無言。一人横綱を15日間全うするかとの問いにも答えず。着替える前には右手にタオルを握ったまま座って1分間も動けなかった。午後8時過ぎに福岡県大野城市の田子ノ浦部屋に戻ったが、ここでも無言を貫いた。
初日から3連敗は自身、小結だった09年初場所以来9年ぶり。昭和以降の歴代横綱では過去6人、8例あり、6度が途中休場。直近は26年前、初場所の旭富士で、その場所限りで引退となった。勝ち越しは唯一、88年秋場所の大乃国で8勝7敗がやっとだった。1場所15日制度が定着した49年以降、初日から4連敗した横綱はいない。休場の危機が現実的に迫ってきた。
8場所連続休場から先場所10勝を挙げて引退危機を脱出。秋巡業もフル参加して下半身を鍛え上げた。場所前稽古も満足の仕上げで「優勝」まで宣言した。それが一転…。初めて経験する一人横綱の重圧か、深い迷路に陥っている。
この日の朝稽古は変化があった。初日、2日目と閉じられた稽古場のシャッターが開いた状態で稽古場に下りて四股、すり足などを“公開”した。途中から若い衆に命じシャッターを下ろし“非公開”に戻ったが、張り詰めたムードは幾分か和らいでいた。
師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)も取組前、「自分の相撲で勝ち星を挙げるのが一番自信になる。体は動いている。もう少し踏み込んでいけば」と期待。前夜に話し合っており「本人はやる気はある。切れているわけじゃない」と巻き返しを確信していた。
しかし師弟の思いもむなしく、負の流れは食い止められなかった。昨年5個も金星配給した九州場所で、2日連続15個目の金星配給となった。状態の上がらぬまま出ても負の記録を重ねるのみ。休場なら進退問題が再浮上し、引退危機にまた陥る。完全復活を決めるはずの九州で、稀勢の里が土俵際に追い込まれた。