稀勢の里初日から4連敗で引退危機再燃…87年ぶりの屈辱
「大相撲九州場所・4日目」(14日、福岡国際センター)
一人横綱の稀勢の里は、行司軍配差し違えの末、平幕栃煌山に敗れ、初日から4連敗を喫した。気迫の出場に打って出たものの、すくい投げに屈し、勝ち運もスルリ。横綱の初日から4連敗(不戦敗を除く)は11日制だった1931年春(1月)場所の宮城山以来87年ぶりの屈辱。金星配給は自身3度目となる3日連続で計16個目となった。10度目の途中休場を決断する時は迫り、引退危機が再燃する。
稀勢の里が勝利の女神にも見放された。物言いがつき、協議の末、阿武松審判部長(元関脇益荒雄)が「稀勢の里の肩が落ちるのが早く」と判定。自身に上がった軍配は無情にも差し違えとなった。
覚悟の出陣も砕け散った。慎重過ぎた3日目までと違い、右で抱えて左も入り強引に寄って出た。土俵際、捨て身の投げにゴロリ。4日連続、土俵上、土俵下に転がった。
支度部屋では「勝負どころで出たか」「一人横綱を務め上げるか」など7つの質問にすべて無言を貫いた。着替える直前、右手に持ったタオルをたたきつけ、舌打ち。珍しく怒りをあらわにした。
横綱の初日から4連敗は87年ぶり。3度目となる3日連続の金星配給は千代の山(53年春、55年初、58年秋)以来、60年ぶりと負の歴史を刻んだ。
3連敗を喫した前夜、師弟で話し合い、出した結論は「出場」。この日朝、師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)が対応した。横綱から「頑張ります」との言葉があった。「責任のある立場。横綱としての相撲を取らないといけないと本人も思っている」と、弟子の思いを代弁した。
初日から3連敗した横綱で皆勤し、唯一、勝ち越したのが88年秋場所の大乃国。現芝田山親方は言う。「下を向いても白星はやってこない。自分の持っているものを全部出し切るしかない。人じゃない。自分がやり切るか。(勝ち星は)8番でもいいじゃないか」とハッパをかけた。
左大胸筋負傷などで昨年夏場所から8場所連続で休場。進退を懸けた先場所、10勝を挙げて再起した。完全復活を期した今場所は「優勝」宣言するほど、自信を見せていたが、悪夢の日々が終わらない。
5日目、平幕玉鷲戦にも強行出場し敗れれば、昭和以降初となる横綱の初日からの5連敗。4日連続金星配給となれば31年春場所の宮城山以来87年ぶりとなる。負の記録を積み重ねれば進退問題に直結する。一方で10度目の途中休場を決めれば、来場所が進退場所となるのは必至。進むも引くも引退危機の再燃は避けられそうにない。