稀勢の里、涙の謝罪…休場 「もう1回チャンスを下さい」来場所で進退懸ける
「大相撲九州場所・5日目」(15日、福岡国際センター)
横綱として87年ぶりに初日から4連敗を喫した稀勢の里(32)=田子ノ浦=が5日目の15日から途中休場した。日本相撲協会に「右膝挫傷捻挫で全治1カ月の休業加療を要する」との診断書を提出。初日(11日)の小結貴景勝戦で負傷した。この日朝、福岡県大野城市の宿舎で自ら休場決断を表明し、涙を浮かべ謝罪した。先場所10勝を挙げ再起したが、横綱在位11場所中9度の休場で引退危機が再燃。来年初場所(1月13日初日、両国国技館)で再び進退を懸けることとなる。
悔しさと情けなさ、さまざまな感情が込み上げ稀勢の里は涙を浮かべていた。自らの口で休場表明は全休で8場所連続休場を決めた7月の名古屋場所以来2度目だが、途中休場は5度目で初めてだ。
午前9時、約50人の報道陣の前に姿を見せ真っすぐな思いを語った。決断は?と問われると「一人横綱として迎えた場所でした。応援してくださった方、ファンの方に申し訳ないですけど、休場することになりました」と無念をにじませた。
場所前から好仕上がりで「優勝」宣言まで飛び出していたほどだったが泥沼。原因は初日に右膝を負傷し「本来の相撲とは程遠い」と全く動けなかった。
「初めてだった部分はある」と一人横綱の重圧が相撲を狂わせた。黒星発進すると2日目以降、3日連続で金星を配給。「やり切りたい気持ちがあったけどなかなか体が続かなかった」。横綱の初日から4連敗という87年ぶりの不名誉記録に精も根も限界に達した。
「最後まで務めるのが責任と思ってましたけど申し訳ない。悔しい気持ちでいっぱい。たくさん声援をもらった。今場所本当に申し訳ない」。目を赤くし謝罪を何度も述べた。
前夜、師弟で15分話し合い決断した。田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)は「本人が『このままでは終われない。もう1回チャンスを下さい』と。本人はしゃべるタイプじゃないのに。次に向けて全力でいきたい気持ちを感じた」と明かした。批判を浴びても、仕切り直して最後のチャンスに懸ける道を選んだ。
8場所連続休場から先場所10勝を挙げて再起したが繰り返した途中休場。今年の皆勤は1場所のみとなり進退問題が再燃する。来場所、進退を懸ける覚悟に関して本人は「早めに痛めたところをしっかりと治してまた考えたい。またいい相撲を取りたい気持ちはあるし考えたい。しっかり考えていきたい」と覚悟は内に秘めた。
親方は「もう1回結果を出して応援してくれる人に恩返ししたいと思っている。本人は覚悟して臨むと思う」と代弁。2年前、初優勝&横綱昇進を決めた初場所で相撲人生の生死を懸ける。