羽生結弦を強行出場させた“原点”ロシアへの思い…診断は全治3週間も「今日しかない」

優勝した羽生結弦(中)と3位の友野一希(右)
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 「フィギュアスケート・ロシア杯」(17日、モスクワ)

 男子フリーが行われ、SP首位の羽生結弦(23)=ANA=が転倒があったものの167・89点、SPとの合計278・42点でフィンランド大会に続くGPシリーズ連勝を果たし、日本男子初の10勝目を達成。上位6選手が出場できるグランプリファイナルの出場も決めた。この日に行われた公式練習で転倒し、平昌五輪前に負傷した古傷でもある右足首を再び負傷。全治3週間と診断された中での魂の演技で優勝したが、GPファイナル(12月6日開幕、カナダ・バンクーバー)、全日本選手権(同月21日開幕、大阪)出場は厳しい状況となった。

 公式練習で右足首を痛めドクターの診察を受けた羽生は、厳しい選択を迫られた。全治は3週間。さらに「今、滑ったら悪化する」と告げられた。欠場し、12月下旬の全日本に備えるという選択肢もあった。ただ、羽生が選んだのは、ロシア杯を滑りきることだった。

 「何をしたくて、何を削るかを考えた上で今日しかないなと思った」

 それほどロシア杯に懸ける思いは強かった。

 フリー「Origin」は、憧れのトリノ五輪金メダリスト、“皇帝”エフゲニー・プルシェンコの伝説のプログラム「ニジンスキーに捧ぐ」をモチーフにしたプログラム。ロシアでのお披露目に向けて、プルシェンコの代名詞でもあったビールマンスピンを練習し、乗り込んできていた。女子選手のような体の柔らかさが必要な同スピン。プログラムに組み込みたかったが「全部きれいにやれたらやっていい、と言われていた。できなくて悔しい」と、唇を噛んだ。

 羽生は「ロシアは自分の原点」と語る。子供の頃に憧れたのは、プルシェンコとヤグディンのライバル対決。幼少期に指導を受けた都築章一郎コーチは、旧ソ連やロシアから指導法を取り入れていた。羽生にとって、この「Origin」をどこよりも披露したかったのが、このロシアの地だった。

 GPファイナル、全日本の出場は羽生自身も認めるように「厳しい」状況となったが、信念を貫く羽生らしい選択だった。

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