日本相撲協会の諮問機関、横綱審議委員会（横審）は２６日、福岡市内で定例会を開いた。九州場所で横綱として８７年ぶりとなる初日からの４連敗（不戦敗を除く）を喫し、５日目から途中休場した横綱稀勢の里（３２）＝田子ノ浦＝に対し、９人全委員の満場一致で初の「激励」を決議。初場所（来年１月１３日初日、両国国技館）への出場を厳命した。横審は成績不振の横綱に対する勧告として「激励」「注意」「引退勧告」（軽い順）をするが、決議まで取るのは極めて異例。初場所は休場は許されず、再起がなければ引退しか道はない。

　稀勢の里に対し、甘い裁定を続けてきた横審も、もう限界だった。会見で北村正任委員長（毎日新聞社名誉顧問）は、９人全委員一致で初の「激励」を決議したことを発表。『激励』書を自ら読み上げた。

　「横綱稀勢の里は長期にわたって、その地位にふさわしい力量を示せずにいる。九州場所における復活に願いをかけたファンの失望は大きい。本委員会は委員会規則に従い、定められた『激励』を決議し、稀勢の里自身が決意した来場所での再起に期待する」

　横審はこれまで朝青龍、日馬富士に対し「引退勧告」を決議した例があるものの、これは暴力事件が絡んでのこと。成績不振を理由に決議まで取り、勧告するのは極めて異例だ。

　８場所連続休場明けの秋場所、１０勝を挙げて再起。しかし、また途中休場を繰り返した。右膝の負傷で全治１カ月の診断。１２月２日からの冬巡業は初日からの参加が厳しく、師匠の田子ノ浦親方（元幕内隆の鶴）は初場所の出場に慎重な姿勢を見せる。それでも『激励』は次の出場場所でなく明確に「来場所」と記された。

　出場は委員総意の厳命だ。「ケガというのは本人にしか分からない。私の気持ちは来場所出てほしい」と同委員長。仮に来場所も休場なら『引退勧告』を決議する可能性は高い。

　山内昌之（東京大学名誉教授）は「ケガは寛大に見てきた。（力士は）ケガは折り合いをつけながらやっている。横綱の良識を地位の重みに立って判断する時がある。今度の１月はそういう場所」と厳しく断じた。これ以上、ケガで出られないなら横綱として資質がないとの判断だ。

　稀勢の里は「もう１回チャンスを下さい」と言い、退路は断ち次場所に進退を懸ける覚悟を示す。初場所で復活がなければ引退と道は決まった。