【記者の目】ボクシング東京五輪準備凍結「ヘロイン売買」ラヒモフ氏の処遇がカギ
国際オリンピック委員会(IOC)は30日、都内で理事会を開き、2020年東京五輪の実施競技からのボクシング除外について結論を持ち越し、国際ボクシング協会(AIBA)の組織運営を調査することを決めた。AIBAからの報告書を基に審議されたが、財務、ガバナンス(組織統治)面で「引き続き重大な懸念がある」(マコーネル競技部長)と判断。調査期間中の五輪マーク、ロゴの使用禁止、五輪予選、テストイベントの停止、チケット販売の停止など厳罰が科された。調査結果は来年6月のIOC総会に報告され、処遇を決定する。
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日本連盟が山根明前会長に退任要求を突きつけたのは今春。その活動をけん引した「日本ボクシングを再興する会」のメンバーの一人は当時、「もう時間がない。今がギリギリだ」と話していた。
前会長には助成金流用やパワハラ問題などが明らかになったが、東京五輪に向けての大きな懸念材料がラヒモフ氏との交流だった。今年1月にIOCは、当時会長代行に就任したラヒモフ氏について「ヘロイン売買に関わる重要人物」として懸念を表明し、五輪競技からの除外を警告した。そのラヒモフ氏との交流を明かしていたのが山根氏で、自らを「世界の山根」と呼ぶ根拠のひとつだった。五輪除外の火種となっている人物と開催国のトップとの親交が深いとなれば、競技存続の可能性はさらに低くなる。
功労者でもある前会長を“クーデター”のような形で追い込むことに「本当はつらい」と話す関係者もいた。それでも、もう時間がなかった。すべては選手を守るため。その思いはAIBAも同じだと信じたい。(デイリースポーツ編集委員・船曳陽子)