「アメフット・甲子園ボウル、関学大３７－２０早大」（１６日、甲子園球場）

　西日本代表の関西学院大（関西）が東日本代表の早稲田大（関東）を３７－２０で下し、２年ぶり２９度目の優勝を果たした。今春の定期戦で日大選手から悪質タックルを受けたＱＢ奥野耕世（２年、関西学院高）が、史上１１人目の甲子園ボウル最優秀選手と年間最優秀選手（ミルズ杯）の２冠を獲得。本人が「波瀾（はらん）万丈」と表する一年を最高の形で締めくくった。関学大は来年１月３日の日本選手権「ライスボウル」（東京ドーム）で社会人王者と対戦する。

　少し恥ずかしそうにはにかみつつ、晴れやかな表情で２つのトロフィーを掲げた。奥野が史上１１人目の大会ＭＶＰとミルズ杯の２冠を達成。激動の一年を乗り越えた２年生ＱＢが、関学大を２年ぶり日本一へと導いた。

　持ち味の思い切りのいいプレーが大一番で開花した。第１Ｑ、開始直後のプレーで１１ヤードのパスを通すと、そこから先制ＴＤまでつなげる。さらにパスコースが見つからないとみるや素早くボールを持って自ら走るスクランブル能力を発揮。パスで１４９ヤード、ランでもチームで３番目に多い４９ヤードを稼ぎ出す。変幻自在に動き回る司令塔が、面白いように早大守備陣を切り裂いた。

　「いろんな人のおかげで賞を取れた。周りに感謝したい」

　今年５月、日大との定期戦で反則タックルを受け、腰などに全治３週間のけがを負った。悪質な反則は社会問題となり、思わぬ騒動へと発展した。負傷そのものよりも、渦中の人物として注目を浴びる日々を過ごすことで、精神に大きなダメージを受けた。奥野は「自分一人では精神的に立ち直れていない」と振り返る。

　傷つく心を救ってくれたのは、チームメートの存在だ。騒動のさなかにあっても、仲間はいつもと変わらぬ態度で近くにいてくれた。「事件どうこうは関係なく、普段通りに接してくれた。おかげで自分も（事件を）忘れることができた」。春の時点で今の自分を想像できるかと問われると、「できていなかったですね」と、感慨深げに言葉を漏らした。

　今では「人生でこんな経験をすることはない。いろいろ自分の経験として勉強することができた」と前向きに捉えている。今年一年を言い表すなら、との問いにしばらく黙り込み、「波瀾万丈」と一言。おどけた笑みで騒動に別れを告げた。

　年明けには社会人王者と真の日本一を争う。「ライスボウルで勝って日本一、を目標にずっとやってきた。チャレンジャーとしてぶつかりたい」。真っすぐな視線で、新たな一年の幕開けを見据えた。