張本、史上最年少V 15歳172日の戴冠…新エース「最高」
「卓球・グランドファイナル」(16日、仁川)
各種目の決勝が行われ、男子シングルスで世界ランキング5位の張本智和(15)=エリートアカデミー=が同4位の林高遠(中国)を4-1で破り、初の頂点に輝いた。15歳172日での優勝は、男女シングルスで大会史上最年少。日本選手の男子シングルス制覇は2014年の水谷隼(木下グループ)以来3度目。張本は第2ゲームを取られて1-1となったが、その後3ゲームを連取した。女子ダブルスで昨年準優勝の早田ひな(日本生命)伊藤美誠(スターツ)組は陳幸同、孫穎莎組(中国)に勝ち、初優勝した。優勝賞金は男子シングルスが10万ドル(約1130万円)で、女子ダブルスは1万4千ドル。
信じられない-。代名詞のバックハンドレシーブ「チキータ」2連発で勝負を決めた張本は、ぽかんとした表情で両手を広げた。「なぜか優勝した瞬間は声が出ない」。年間トップ選手だけが出場する世界最高峰の舞台で、15歳にして王者となったことを誰よりも驚いていたのは張本自身だった。
全日本選手権の最年少優勝で始まった張本の1年は、さらにスケールを大きくしてグランドファイナルの最年少優勝で幕を閉じた。7月以降は勝てない時期が続き「ここだけは譲れない」と臨んだ決勝。中国の期待の星、林高遠を圧倒し、ついに世界の舞台を制した。
第2ゲームを13-15で失い、1-1で迎えた第3ゲームが勝負の分かれ目だった。開始から一気に6連続得点とした後、逆に追い上げられて10-9のピンチを招いた。だが「去年より余裕を持ってできる」と話す通り、冷静さが今大会の強み。相手サーブを得意の「チキータ」で切り返してゲーム奪取。日本男子の倉嶋監督が「メンタルの強さが出た」と称賛したように、窮地での高い精神力が勝利を呼び込んだ。
大会を通じて安定感が光った。体の成長に伴い、プレーが進化。身長は175センチに伸び、夏から始めたベンチプレスの成果で筋力もアップした。得意のバックハンドだけでなく、前陣や中陣でのフォアのパワー勝負でも負けなくなったことで戦術の引き出しが増えた。
試合後は、離れて暮らす母親に優勝記念の花束を手渡して抱き合った。母が初めて海外の試合を観戦に来た大会で見事に優勝。「山あり谷ありの1年だった。お母さんが来てくれて優勝できたのも何かの縁。一番感謝している。最高としか言いようがない」。中国勢が最大のライバルだが、今年は五輪王者の馬龍、張継科を撃破。さらに、若手エースの樊振東、そして林高遠にも初勝利を挙げた。目標とする東京五輪の金メダルにまた一歩近づいた。