小林陵侑が全勝V 度胸満点“新日本人”が新エース!不利な追い風はね返し大飛行
「ノルディックスキー・W杯ジャンプ男子」(6日、ビショフスホーフェン、ヒルサイズ=HS142メートル)
ジャンプ週間最終戦を兼ねて行われ、小林陵侑(22)=土屋ホーム=が135メートル、137・5メートルの合計282・1点で優勝した。67回目のジャンプ週間で史上3度目となる4戦4勝の完全制覇で、総合王者に輝いた。2回目にトップの飛距離をマークし、1回目の4位から逆転。伝統のジャンプ週間で1997~98年シーズンの船木和喜(フィット)に続いて2人目の総合優勝を果たした。W杯5連勝で、日本選手のW杯シーズン最多勝利記録を8に伸ばした。
小雪舞う表彰台の中央で、右拳を夜空に向かって力強く突き上げた。伝統の4連戦の総合優勝を、史上3人目となる完全制覇で達成。小林陵は「まだ自分は五輪の金メダルを取っていないので(過去の名手に)並べない」と謙遜するが、船木、原田らを擁し1990年代に世界一の選手層を誇っていた日本ジャンプ界に輝く新星が現れた。
「あまり他の人のことは考えない」と自らのジャンプに神経を研ぎ澄ます。この日も、外国勢が舌を巻く踏み切りの技術と高い集中力ががっちりかみ合った。
飛躍直前に風の影響で待たされた1回目は、助走路に雪が積もって思うように速度も出ず、不完全燃焼の内容だった。しかしトップを4・0点差で追う2回目は見事に切り替えた。不利な追い風をはね返し137・5メートルの大飛躍。結局2位に13・8点の大差をつけた。
ジャンプ週間開幕前の記者会見で、海外メディアに「ネオヤパナー(新日本人)」と自己紹介した。大会期間中に用具を忘れて公式練習を飛べなくなるアクシデントもあったが、平然としたもの。兄の潤志郎も「日本人ぽくない」と評する。何事にも動じない性格が、重圧のかかる場面でも力を十分に発揮できる素地になっている。
2月開幕の世界選手権や、日本人初のW杯個人総合のタイトルにも期待が膨らむ。「ジャンプは楽しい。サッカーとか野球のようにメジャーなスポーツになってくれればうれしい」との思いを抱く大器が、伝統の大会で大輪の花を咲かせた。