吉田沙保里「女性として幸せ絶対つかみたい」笑顔で引退会見 東京五輪はコーチで

 レスリング女子で五輪3連覇を達成し、現役引退を表明していた吉田沙保里(36)が10日、都内で引退会見を行った。約40分間涙はなく、時折笑いも起きる和やかな会見で「レスリングは全てやり尽くしたという思いが強く、引退することを決断いたしました」と晴れやかに語った。東京五輪に向けては、引き続き日本代表コーチとして、後輩たちを精神的にサポートする意向を示した。会見には報道陣、関係者合わせて約200人(テレビカメラ28台、スチールカメラ34台)が集まった。

 強く、明るく、万人に愛された“霊長類最強女王”らしく、引退会見も湿っぽさはゼロで笑いの絶えないものとなった。白いジャケット姿で登場した吉田は「このたび33年間のレスリング選手生活に区切りをつけることを決断しました」と晴れやかに報告。東京五輪挑戦の可能性も探っていたが、再びあのキツい練習を再開するモチベーションを見いだすことは難しかった。

 「年をとるにつれてだんだん体力が落ちてきたり衰えたりしていく中でも本気になったら(戻せる)という思いはあったが、気持ちの部分が追いつかない状態で。レスリングはやり尽くしたなという思いが強くなった」

 最終的に決断を下したのは昨年12月。全日本選手権を解説席で眺め心を決めた。「若い選手が世界で活躍する姿を見ることも多くなって、この子たちにバトンタッチしてもいいのかなと。練習でも勢いを感じたし、やり尽くしたという思いもだんだん強くなった」。主戦場だった53キロ級では奥野春菜(19)、向田真優(21)=ともに至学館大=と2人の世界女王がしのぎを削っている。心強い後進の存在が引導を渡した。

 最初に引退を報告したのはいつも誰より近くにいた母幸代さん。「すべてやり尽くした」と伝えると、幸代さんも「あなたが決めたことだからそれでいいと思うよ。本当にご苦労さま」と笑ってねぎらってくれた。14年に亡くなった父栄勝さんの教えは「いいときに辞めろ。立つ鳥跡を濁すな」というもの。勝ってマットを去ることはできなかったが、幸代さんは「主人も『もういいだろう、よく頑張ったよ』と言ってると思う」と話した。

 東京五輪でマットに立つことはできないが、今後も日本代表コーチとして指導を続ける。セコンドに入る可能性について吉田は「コーチとしては経験が全然なくて、迷惑をかけない程度に協力できたら」と控えめに話しつつ、「(後輩の)精神的な支えができたらいい」と“最強の姉御”として共闘を誓った。

 今後はタレント業をはじめ新たな挑戦も見据える。「レスリングひと筋でここまできたので、それ以外のこともやっていきたいという思いは強い」。現在結婚の予定はないが、「女性としての幸せは絶対につかみたい」と力を込めた。3歳から追い続けてきた五輪の金メダルという夢は3つかなえて区切りとなるが、人生の金メダルは無限。これまでと変わらぬ強さと明るさを武器に夢を追い続けていく。

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