稀勢の里連敗…それでも出る!田子ノ浦親方が決意を代弁

 「大相撲初場所・2日目」(14日、両国国技館)

 右膝負傷で先場所を途中休場し今場所に進退を懸ける横綱稀勢の里(32)=田子ノ浦=が平幕逸ノ城にはたき込まれ、初日から2連敗を喫した。引退危機をはね返すどころか、不名誉な記録を重ねるばかり。横綱在位中の8連敗(不戦敗含む)は15日制が定着した1949年以降、貴乃花らに並ぶワーストタイ。横綱12場所目で17個目の金星配給となった。反撃の兆しはなく、進退は追い詰められる中、師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)は2日目限りでの引退を否定し、3日目、平幕栃煌山戦に出場する意向を示した。

 稀勢の里が土俵に両手をつきうつむいた。5秒間、固まって動けない。土俵に上がると頭を下げた後、何かを悟ったかのように2度、3度うなずいた。

 取組前、館内には「頑張れ」、「辞めないで」の地鳴りのような大コールに手拍子まで起こった。異様な雰囲気の中、3連敗中だった“天敵”、226キロの巨漢逸ノ城に歯が立たなかった。

 立ち合いは1度目、稀勢の里の手つき不十分。2、3度目は突っかけられた。4度目、当たって押し込み先手を取ったがいなされ前のめり。必死に残したがはたかれてバッタリ転がった。館内は悲鳴、ため息、そして、ねぎらいの拍手まで湧き起こった。

 鬼門の初日に続き悪夢2連敗。昨年秋場所千秋楽に負けて以降、横綱ワーストタイの泥沼8連敗(不戦敗含む)。平幕に4連敗で17個目の金星配給。不名誉な記録を重ね、引退危機は深まる一方だ。

 支度部屋では殺到する報道陣に下がるよう言い、付け人を押した。合わない立ち合いか、自らのふがいなさか、イライラ。質問には「ハー」、「ウー」など上の空だった。

 田子ノ浦親方は国技館からの帰り際、「本人が何か言ってくれば」と話し、進退は本人の意向に沿って判断する考えを示した。その後、部屋に戻った際は「まだ(進退に関し)話していない」と2日目での引退を否定。直接会談も行われなかった。「あしたに向けて治療に行って体を休める」と3日目も出場する弟子の強い決意を代弁した。

 八角理事長(元横綱北勝海)は「気持ちは行っているけど体が足が付いていっていない。腰が軽くなっていた。休場明けでまだビシッといっていない。ここまで来たら気持ちしかない。一つ勝てば変わってくる」と猛ゲキを飛ばした。土俵下で見た藤島審判長(元大関武双山)は「プレッシャーに打ち勝ったから横綱になっている」と底力に期待した。

 横綱だけが知る引き際がある。武蔵川親方(元横綱武蔵丸=デイリースポーツ評論家)は6場所連続休場明けの03年九州場所で3勝4敗となり、8日目に引退した。「俺は2敗した瞬間、終わりと思った。引っ張ってもうまくいかない」と当時を思い返し、2敗は一つの決断段階だったことを明かした。苦悩の後輩横綱に「流れに身を任せるしかないよ」と肩の力を抜くように助言した。

 2年前は初優勝&19年ぶり日本出身横綱昇進を決めた初場所。列島に“稀勢フィーバー”を起こしたスターが今は屈辱にまみれ、進退問題が佳境に来た。

 今場所は黄緑の羽織に緑のはかまで場所入りする。緑色の心理効果は緊張の緩和、安心、安定とされる。平静さを失わず、土俵際、踏ん張って逆襲に転じるのみ。まだ気力は残っていると信じたい。

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