高安 兄弟子・稀勢の里に捧げる白星 綱とり誓った「それが一番の恩返し」
「大相撲初場所・4日目」(16日、両国国技館)
絶対に負けるわけにはいかなかった。自分を鍛え上げてくれた兄弟子の稀勢の里が引退を発表し、相手は前日にその横綱に引導を渡す形となった栃煌山。高安は気合がほとばしった立ち合いの体当たりから一気に突き放した。過去7勝20敗だった相手に完勝。「今日は1つの節目。負けられない気持ちだった」と、うなずいた。
苦楽を共にしてきた兄弟子の話になると、一言一言かみしめるように言葉を紡いだ。頭に浮かぶのは、ただただ強くなることを追い求め、汗と土にまみれた日々。「自分が若い衆の頃からずっと稽古をつけてもらって、関取になっても連日何十番も取って、強くしてもらった。今の自分があるのは、あの稽古のおかげ。常に自分の上にいてくれて、目標だった」と、感謝の言葉しか出てこなかった。
稀勢の里は、自身が横綱に昇進した際「高安を大関に引き上げるのが自分の使命」と話し、高安が大関となった際には「もう1つ上がある」と、常に期待をかけてくれた。優勝パレードのオープンカーにも同乗させてもらった。「あの光景は今も頭から離れない。色濃く残ってます」-。
大関昇進以降、なかなか殻を破りきれないでいる。高安自身、兄弟子の思いに報いるために、やるべきことは分かっている。「自分もあの景色を拝めるように一生懸命やりたい」と話し、横綱昇進にも「それが1番の恩返しになる」と、意欲をにじませた。外国勢に立ち向かい、日本人力士の誇りを示してきた兄弟子。魂を引き継ぎ、頂点を獲りにいく。