「大相撲初場所・千秋楽」（２７日、両国国技館）

　関脇貴景勝が大関豪栄道に押し出されて４敗目（１１勝）を喫し、場所後の大関昇進は見送られた。取組前に１差で追っていた関脇玉鷲の初優勝が決定し、千秋楽結びの一番で昇進を決める１２勝目はならなかった。昇進目安の直前３場所合計３３勝をクリアしながら大関を逃すのは１場所１５日制が定着した１９４９年以降ではわずか５例目と厳しい判断。昇進を預かる審判部の阿武松部長（元関脇益荒雄）は次の春場所（３月１０日初日、エディオンアリーナ大阪）が大関とりとなることを明言した。

　大関はまだ早い！埼玉栄高の先輩大関の意地に貴景勝が跳ね返された。立ち合い、自身より低く当たってきた豪栄道に押し負け、たまらず引くと一気の出足に何もできず、押し出された。

　千秋楽結びの一番、運命を左右した４敗目になった。全取組終了後、阿武松審判部長は「もう１場所、見させていただきたい」と場所後の大関昇進を見送ることを明言した。

　この日の昼、審判部が昇進に関し協議したが「最後まで見てから」と保留した。同部長が取組後に明かした話では、豪栄道戦に勝っていれば優勝の行方に関わらず、大関昇進を決める臨時理事会の開催を要請することが基本線だった。１２勝目を逃したことで昇進への機運は立ち消えた。

　３場所計３３勝の昇進目安をクリアしながら厳しい判断。ただ先場所１３勝を挙げ優勝したが、先々場所が９勝で慎重論も根強かった。

　初の技能賞を獲得し「押し相撲で抜群の安定感。大関に近い力士」と実力は高評価される。一方でまだ関脇１場所で三役実績も乏しい。同部長は「そういうもの（異論）がなく昇進してほしい」と見送り理由を説明。来場所が正式な大関とりとなることを明言した。

　本人は落下した際に右足を痛めたか、アイシングしながら取材に応じた。「全力でやり切った。経験を今後に生かさないと。（千秋楽結びは）勝ったら収穫あったかも」と唇をかんだ。

　兵庫・芦屋市出身。昇進は準地元の大阪、春場所に持ち越し。「もう少し実力を磨いていかないと」と２２歳は悔しさを糧に成長を誓った。