紀平が逆転V トリプルアクセル1本でも圧倒 成長見せた国際大会5連勝

 「フィギュアスケート・四大陸選手権」(8日、アナハイム)

 欧州以外の国・地域が参加して行われ、女子フリーはショートプログラム(SP)5位の紀平梨花(16)=関大KFSC=が冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を決めるなどフリー1位の153・14点、合計221・99点をマークし初優勝を果たした。これでシニアに転向した今季は国際大会5連勝で、GPシリーズのNHK杯、フランス杯に続く逆転優勝となった。SP2位の坂本花織(18)=シスメックス=はフリー4位の合計206・79点で4位。SP8位から巻き返した三原舞依(19)=シスメックス=が合計207・12点で3位に入った。

 ミスは許されない。16歳の少女はその状況をポジティブに、そして冷静に受け止め、乗り越えた。ビシッと決めるはずのフィニッシュのポーズでふらついたのはご愛嬌(あいきょう)。ピアノの音色が静まると同時に、米国のハイテンションな観客は総立ちになり、割れんばかりの大歓声を送った。「よかった!」。心からのガッツポーズで演技を締めくくると、紀平は自らに向かって小さくパチパチ拍手を送った。

 演技前の一番の焦点は、今季多くの試合で2本組み込んできたトリプルアクセル。1本か2本か。浜田美栄コーチは「2本目は自分の感覚があるから自分で判断したらいい。決めたら迷うな」とそっと背中を押した。直前の6分間練習まで迷い続けた。しかし、そこから16歳とは思えぬ冷静さで自身の状況を見極め、判断した。

 「思った以上に試合のリンクに慣れきっていなかった。2本はちょっと難しいかなと感じたので、無理することなく、安全に良い成績を残せるように、1本と考えた」と紀平。大技に固執しすぎることなく腹を決めた。

 流れるような冒頭のトリプルアクセル。そしてダブルアクセル-3回転トーループ。その後も大きなミスなく演じ切った。「いつもより集中できていたので、そこがすごくよかった」。重圧から解き放たれ、爽やかな笑みで振り返った。

 首位との5・06点差をはねのけ、逆転でつかんだタイトルと共に得たのは、かけがえのない自信だ。米国入り後に左足の靴を替え、左手薬指の亜脱臼もあった。その影響でジャンプの調整が遅れ、リンクの感触はつかみきれないまま。テープの固定で左手は握れず、跳ぶときの腕の位置も少し右に変えた。加えて試合時間は苦手とする夜だ。

 もともと神経質で、少しでも不安があると気にして集中力を欠くタイプ。不安材料は山積み。もはやお手上げ状態だった。それでも「集中して前を向いてやるしかない」。不安を数えるのではなく自分を信じた。心が強く、たくましくなった。

 点数で言えば、トリプルアクセルを減らしたにもかかわらず自己ベストまで1・58点と肉薄。伸びしろはまだまだある。ただ、浜田コーチはそれ以上に「靴の準備、体のこと、色々なことが自分のミス。ちゃんと自分で処理できるようになってほしい」と指摘。「どんどんプレッシャーは大きくなるけれど、自分を見失わずに、自分がやれることをいつもできるように」と課題を挙げた。

 3月には世界一を決める世界選手権が日本で開かれる。劇的なドラマが続く16歳のシンデレラストーリーは、最高のエンディングへと着実に向かっている。

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