宇野昌磨、初V! SP4位から大逆転…フリー世界最高197.36点をマーク
「フィギュアスケート・四大陸選手権」(9日、アナハイム)
欧州以外の国・地域が参加して行われ、男子ショートプログラム(SP)4位の宇野昌磨(21)=トヨタ自動車=がフリー1位で逆転し、合計289・12点で優勝した。フリーの197・36点は羽生結弦(24)=ANA=の190・43点を上回るルール改正後の世界最高。宇野は主要国際大会初の金メダル。前日に女子は紀平梨花(16)=関大KFSC=が制し、日本勢の男女同時優勝は2014年の無良崇人、村上佳菜子以来5年ぶりとなった。
終わった。やり切った。ただただその思いがあふれた。フィニッシュのポーズを決めたその瞬間、気付けば宇野は膝から氷上に崩れ落ちていた。
冒頭の4回転フリップを決めると、終盤の3連続ジャンプで着氷がやや乱れた以外は完璧な演技を披露。重厚なピアノの音色に合わせた荘厳な演技で観衆を魅了し、フリーの今季最高得点を更新した。
「1位という順位になれたことは、すごく素直にうれしい」。これまで6大会続いていた主要国際大会の銀メダル。シルバーコレクターを返上し、初の金メダルを手にした。
昨年末の全日本選手権から1カ月ほどで計3度右足首の捻挫を繰り返しながら、迎えたこの舞台。たどり着いた優勝会見で、宇野は真っすぐ前を見てこう言った。
「世界選手権ではもっともっと練習した上で、優勝を目指したい」
これまで順位にはまるで興味なし。五輪の銀メダルも「他の試合の銀メダルとあまり変わらない」と言い放った。自分のベストを尽くすことが何より重要。順位はあくまでおまけだった。そんな宇野が発した優勝宣言。きっかけは4位に終わったSP後のやりとりにあった。
やり切れなかった。もどかしさばかり募る演技の後、宇野は出水慎一トレーナー(40)のケアを受けながら、思いをはき出した。気付けば2時間。さまざまな話をする中で、トレーナーの「昌磨には世界選手権で1位を取ってもらいたい。その方針で今年1年やりたいと思っていた」という言葉を聞いたとき、不思議と心が動いた。
「1位を取ることが自分のためではなく、みんなのためにもなるんだ。ならば僕は1位にこだわりたい」
これまでも優勝への期待は嫌というほど感じていた。そうすべきだという自覚もあった。それでも「自分の満足いく演技がしたいって気持ちの方が正直強かった」と宇野。初めて、誰かのために滑ろうと思った。そして胸に光る金メダルを下げながら、それを力強く宣言した。
自分のことだけに集中する方が、きっと気持ちは楽だろう。しかし今の宇野は、もうそれを選ばない。「感謝の気持ちを込めて頑張ろうと思う」。初めてつかんだ金メダルは、宇野を本当の意味でのトップスケーターへと押し上げた。