大野、海老沼制しV 敬意を胸に本能全開「唯一、命のやりとりできる相手」
「柔道・GSデュッセルドルフ大会」(23日、デュッセルドルフ)
男女計4階級が行われ、男子73キロ級は日本勢同士の決勝となり、大野将平(27)=旭化成=が66キロ級の元世界王者で五輪2大会連続銅メダルの海老沼匡(パーク24)に優勢勝ちした。ともに昨年の世界選手権で2位に入った男子81キロ級の藤原崇太郎(日体大)、女子63キロ級の田代未来(コマツ)は決勝でロシア選手を下して優勝した。藤原は延長の末に反則勝ちし、田代は一本勝ち。土井雅子(JR東日本)は3位決定戦でオランダ選手に勝った。女子70キロ級には日本勢が出場していない。
揺るぎない強さの一方で、満足するそぶりはかけらもない。大野は頂点に立ったが「自分の柔道を貫いて勝っていく難しさを、2019年の初戦で痛感した」と厳しい表情を崩さなかった。
3回戦から準決勝までの3試合は一本勝ち。得意の内股で投げ飛ばしても「もやもやするような、我慢の一日だった」と追い求める技の鋭さには至らなかったという。そんな中で闘争心を呼び覚ましてくれたのが決勝の相手、海老沼だった。
66キロ級の元世界王者で五輪銅メダリスト。柔道私塾「講道学舎」の先輩に当たり、駆け引き無用の「柔道観」は同じだ。大野は「互いに『矛』対『矛』。唯一、命のやりとりのできる相手」との敬意を抱き、ぶつかった。試合中盤にタイミングのいい浮き技で崩して技ありを奪い、試合を支配した。
既に五輪王者となり、勝利という結果だけに一喜一憂することはない。「自国開催で世界選手権や五輪があるのは、すごくモチベーションになる。キャリアも後半に近づいている。日本柔道の中でも強く名を刻めるように19年、20年を過ごしていきたい」。日本のエースははるかな高みを見据え、歩み続ける。