【東京へ駆ける・卓球の観戦ポイント(2)】伊藤美誠はネガティブ情報を全削除
卓球の世界選手権(4月21~28日、ブダペスト)の代表が決まり、2020年東京五輪への機運が高まっている。男子の張本智和(15)=エリートアカデミー、女子の伊藤美誠(18)=スターツ=ら成長著しい若手を中心に、選手の技術も人気も上昇一途。誰もが一度は経験がある「やる競技」から、高度な技術を「見る競技」へ。初心者でもわかる卓球の観戦ポイントを元日本代表監督で近大名誉教授の高島規郎氏(67)が解説。その2。
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「卓球の戦術は大きく分けて【1】スピード、【2】回転、【3】コースの3つ。この3つの組み合わせを1球1球目まぐるしく考える」
伊藤は1分間の高速ラリーで180回のギネス記録を樹立した。約0・3秒に1球を打つ計算。試合では1打1打、無数の戦術が入った記憶の引き出しを瞬時に開けている。
「これは持って生まれた脳の使い方で、指導者が教えることは無理。伊藤選手は次にどうしたらいいか、反射的に出てきて短時間で結論が出せる。教えられなくても、こっちがダメだから逆にひねろう(逆チキータ)とか、工夫して新しい技術も編み出してくる。一番の強みは迷わない決断力。自分が選択した戦術をどんな場面でも自信を持って攻めきる強さがある。10点を先に取られてもジュースでウイニングショットを取ればいい。ミスしてもたった1点だと考えられる。記憶の中に自分に必要なものだけを積み重ねて、失敗やネガティブなことは全削除して残らない。うまくいった組み立てをいつでも(引き出しから)出せる」
全日本選手権では、張本の妹で10歳の美和や男子で11歳の松島輝空らが高校生や実業団選手を倒した。
「子供はメンタルがあまり試合に影響しない。教えられたことに無心に向かっていく。戦術はコーチが事前に情報分析しておいて教えている。それを一生懸命に迷いなくやるから勝てる」
卓球は互いのミスの誘い合いでもある。そのミスを恐れず守りに入らない子供たち。いかに卓球がメンタル勝負であるかがわかる。