「陸上・全日本競歩能美大会・２０キロ」（１７日、石川県能美市）

　今秋の世界選手権（カタール、ドーハ）の代表選考会を兼ねて行われ、アジア大会銀メダリストで、京大出身の山西利和（２３）＝愛知製鋼＝が自己ベストの１時間１７分１５秒で初優勝し、初めての世界選手権代表に内定した。世界記録保持者で、同記録を出した１５年大会以来４年ぶりの出場となった鈴木雄介（３１）＝富士通＝は１時間１７分４７秒で４位に終わり、代表入りが厳しくなった。

　曇ったメガネの奥で、山西は冷静にその頭脳が導き出したヴィクトリーロードだけを見据えていた。雨中の激闘。残り１キロでスパッと抜け出すと、そのまま歓喜のゴールへ。京大出身。いつもは冷静な知性派が声を上げ、激しく拳を振った。

　「やっと世界のスタートラインに立てた」。アジア大会、今年２月の日本選手権とラストスパートで惜敗。今大会に向け、勝ち方だけを意識した。「勝ちパターンを明確にイメージして、そこに自分の力を肉付けした」。これまで“頭”に話題が及ぶことは本意ではなかったが、実業団に入り「陸上選手としてフラットに考えた時に、そこは僕の１つの強み」と思えるようになった。頭脳をフル回転させ、勝利の方程式を導き出した。

　トレードマークは青縁メガネ。「僕ぐらいになると、レース中もズレません。メガネが本体なので」。１つ殻を破った知性派ウオーカーは「ドーハ、東京五輪と２つ金メダルを目指したい」と話し、“本体”をクイッと押し上げた。