「フィギュアスケート・世界選手権」（２０日、さいたまスーパーアリーナ）

　２１日の男子ショートプログラム（ＳＰ）を控え、公式練習が２０日、サブリンクで行われ、右足首のじん帯損傷から４カ月ぶりの復帰戦となるソチ、平昌五輪２大会連続金メダリストの羽生結弦（２４）＝ＡＮＡ＝は開始わずか３分過ぎに曲なしでＳＰを完ぺきに滑りきるなど異例の調整法を見せた。さらにリカバリー策として世界初のトリプルアクセル－トリプルアクセルや、ルール上は組み込めない驚異の“４連続ジャンプ”も披露するなど独創的な練習で、大一番への仕上げを行った。

　羽生には未来すらも見えているのだろうか。練習開始１分で上着を脱ぎ、同３分２０秒からは曲が掛かっていない状態でＳＰ「秋によせて」の通し練習を始めた。冒頭４回転サルコーを含め、すべての要素を完遂。ここまででわずか６分。異例の超効率的な調整だった。練習後行われた滑走順抽選で引いたのは、最終組の第１滑走。過去２度の五輪でも第１滑走でＳＰ首位発進から優勝している“吉兆”だが、６分間練習直後に滑る独特の難しさのある滑走順。結果として最高のデモンストレーションとなった。

　この日の練習も五輪王者の独壇場だった。有料ながら約１０００人の観衆が練習を見守り、登場すると黄色い歓声が上がった。ＳＰ練習後、４回転ループの踏み切りで足を滑らせ転倒した際には悲鳴も起こったが、その後は完ぺきに決めて問題なしをアピールした。

　フリー「Ｏｒｉｇｉｎ」の曲がけ練習では４回転トーループからのトリプルアクセルが２回転トーループになってしまい失敗したが、その後のトリプルアクセルにトリプルアクセルをつける世界初のリカバリーを披露。さらにその後、ルール上認定されないが４回転トーループからのトリプルアクセルにつなぎのジャンプを挟み、３回転サルコーをつける驚異的な“４連続ジャンプ”もやってのけた。最後は上着をなびかせステップを確認すると、Ｙ字バランスを披露。歓声を最後まで途切れさせなかった。

　独創的な調整法で、決戦への最終調整を完了。２年ぶり３度目の頂点へ、羽生結弦にしか見えていない登頂ルートでアタックする。