羽生 逆転Vならず…連覇チェンと屈辱22.45点差で2位「負けは死も同然」
「フィギュアスケート・世界選手権」(23日、さいたまスーパーアリーナ)
男子フリーが行われ、SP3位だった冬季五輪2連覇の羽生結弦(24)=ANA=は今季自己最高の206・10点をマークし、合計300・97点で銀メダルを獲得した。国際スケート連盟(ISU)公認大会で世界初の4回転トーループ-トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功したが、SP首位のネーサン・チェン(19)=米国=が現行ルールで世界最高の合計323・42点をマークして2連覇。SP、フリーともに上回られた五輪王者は、「自分にとっては負けは死も同然。勝ちたい」とリベンジを誓った。
銀盤の中央で右の拳を握った羽生は間違いなく勝者に見えた。しかし結果は負け。“絶対王者”は負けを誇ることを許さない。「負けには負けっていう意味しかないので。自分にとっては負けは死も同然と思っている」と羽生。表彰式では悔しさを押し殺してめいっぱい笑い、大勢のファンへ向かって「ありがとうございました」と何度も叫んだ。
「緊張はした。ただできうることはした」と羽生。万事は尽くした。練習から確認し続けた冒頭の4回転ループ。この日の朝は練習終了後もリンクサイドに残り「納得できるまでやろうと思った」と8分半もイメージトレーニングを敢行した。
勝負の4回転ループは流れるように着氷。続く4回転サルコーが回転不足の判定を受けたが、演技後半に4回転トーループ-トリプルアクセルの連続ジャンプを世界で初めて決めるなど、今季初のフリー200点、合計300点超えを達成する魂の演技を披露した。鳴りやまない拍手とプーさんのぬいぐるみの嵐がリンクへと贈られる。会場を異様な雰囲気に包み込み、チェンに重圧を掛けた。
それでも頂点には届かなかった。「完全に実力不足」と唇をかんだ羽生。「リスペクトがあるからこそ勝ちたい。とにかく強くなりたい」と強く誓った。
昨年11月、平昌五輪前に痛めたのと同じ右足首を負傷。復帰当初は痛み止めなしでジャンプを再開したが、着氷時の負担は相当なもの。「完治ではない」と話していたように、4回転ジャンプを解禁して以降の2カ月は平昌五輪時に用いたのと同様の痛み止めを飲み続けているという。満身そういの中、ファイティングポーズをとり続けてきた。
今後は右足首の状態と相談しながらになるが「アクセル、やっていきたいですね」とクワッドアクセル(4回転半)への挑戦にあらためて意欲を示した。そして「アクセル、フリップ、ルッツ。全種、いろいろ考えながら」と全4回転へのトライを示唆。負けが早くも次への闘志をかき立てている。より強くなるために、羽生は挑戦を続ける。