高橋尚子さん、小出監督の告別式で最後の手紙 初マラソンから絆の儀式「一緒に空に」

小出義雄さんとの思い出を語りながら空を見上げる高橋尚子さん=千葉・佐倉市のさくら斎場(撮影・堀内翔)
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 24日に死去した陸上長距離の名伯楽、小出義雄さん(享年80)の告別式が29日、千葉県佐倉市内で行われ、28日の通夜と合わせて約1600人が参列した。教え子で00年シドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子さん(46)は「最後の手紙」として弔辞を読み上げた。

 「監督、高橋です。Qです。つい先日までそうやって呼びかけると、『おう、声で分かるよ』。そうやって返してくださる声も、手を握り返してくださることも、もうないというのは信じられません」と、涙をこらえて語り出した高橋さん。「最後のお手紙を読ませていただくことをうれしく思います」と思いを伝えた。

 これまで2人は何度も手紙のやりとりをしてきたという。最初の手紙は、初めてのマラソンを迎える前夜のこと。「試合に対する不安や怖さだけじゃなく、スタートまで導いてくださったうれしさと、多くを費やしてくださった感謝の気持ちをどうしても伝えたくて、ペンを取り、手紙を監督の部屋のドアの下からそっとしのばせました。大会当日の朝、目を覚ますと、私の部屋のドアの下から、思いがけず監督の手紙が入っていて、すごくうれしかったことを覚えています」と振り返った。それ以降、手紙のやりとりはレース前の恒例儀式になっていたという。

 28日、高橋さんはそれらの手紙をもう一度読み返した。大切な日々を振り返り「弱い私を根気よく指導してくださって、ありがとうございました。監督の貴重な時間を費やしてくださって、ありがとうございました。オリンピックの金メダルを取らせてくださって、世界記録を出させてくださって、ありがとうございました」と感謝の思いを伝えた高橋さん。「私の中で監督は永遠です」と語りかけた。

 その後取材に応じた高橋さんは「やっぱりまだ、信じられない気持ちでいっぱいです。近くに居て、いまだに『おっ!』ってあそこから手を上げて出てきてくれるようで。そんな思いのまま、まだ居る状態です」と率直な思いを明かした。

 花を手向けようと、高橋さんがひつぎに向かうと「私が書いてきた数々の手紙をひつぎの中に入れてくださっていた。一緒に空に持っていってもらいたいと、うれしい気持ちになりました」と涙をこらえ、精いっぱいの笑顔で明かした。

 告別式には高橋さんや92年バルセロナ、96年アトランタ五輪メダリストの有森裕子さん(52)、97年世界選手権女子マラソン金メダリストの鈴木博美さん(50)、日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダー(62)らが参列した。

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