Qちゃんから小出監督へ最後の手紙「私の中で監督は永遠です」
陸上長距離の名指導者で、24日に肺炎のため亡くなった小出義雄さん(享年80)の告別式が29日、千葉県佐倉市内で約600人が参列して営まれた。教え子で2000年シドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子さん(46)は「最後の手紙」として弔辞を読み上げた。ひつぎは高橋さん、1992年バルセロナ五輪で銀、96年アトランタ五輪で銅メダルを獲得した有森裕子さん(52)、97年世界選手権優勝の鈴木博美さん(50)らの手で運び出された。
幾度となく送り、受け取ってきた手紙。28日夜、高橋さんはその一つ一つを読み返したという。何気ないやりとりが脳裏に浮かぶ。「小出監督へ」。ペンを取り、思い出を胸に1字1字を大切につづった。
「監督、高橋です。Qです」。あふれる涙をこらえ、優しく語りかけるように述べた弔辞の中で、恩師へ送る最後の手紙を読み上げた。
“文通”は試合前の2人の儀式だった。初マラソン前夜、期待と不安を伝えようと高橋さんが手紙を書き、監督の部屋のドアの下からそっと入れたのがきっかけ。翌朝、目が覚めると自室のドアの下に返事が来ていた。「すごくうれしかった」。入院後も、何度も手紙をやりとりした。
「私の中で監督は永遠です」。弔辞では「ありがとうございました」と計5度述べたが、感謝は伝えきれない。花を手向けようとひつぎに向かうと、自身が送った数々の手紙が収められていたという。「一緒に空に持っていってもらいたい」と思いを込めた。
「やっぱりまだ、信じられない気持ちでいっぱい」と高橋さん。それでも最後は笑顔で別れを告げた。「人を大切にすることや周りに感謝をすること、走ることの楽しさを受け継いで、しっかりみなさんに伝えていけるようにしたい」。平成の女子マラソンを築いた名伯楽が、平成の終わりに天国へと旅立った。