ウルフ・アロン涙の初V「うれしい」 平成最後に23歳新王者誕生
「柔道・全日本選手権」(29日、日本武道館)
世界選手権(8月開幕、日本武道館)の男子100キロ超級代表最終選考会を兼ねて行われた。すでに100キロ級で代表入りを決めていたウルフ・アロン(23)=了徳寺学園職=が、決勝で12年大会の覇者、加藤博剛(33)=千葉県警=を延長の末、支え釣り込み足で技ありを奪って破り、初優勝した。100キロ級の選手の優勝は、13年大会の穴井隆将以来、6年ぶり。大会後に強化委員会が開かれ、100キロ超級代表にはリオデジャネイロ五輪銀メダリストの原沢久喜(26)=百五銀行=が選出された。
平成というさまざまな歴史が塗り変わっていった時代を象徴する新王者の誕生だった。ウルフの名が示すようにアグレッシブな攻めの柔道を展開し、超級を含めた並み居る強豪を撃破。米国人の父と日本人の母の間に生まれた東京都葛飾区出身の23歳は「カタカナの名前の選手が優勝したのは初めて。それもうれしい」と、人なつっこい笑顔を浮かべた。
悲願の頂点だった。インタビューでは「たくさんの人に支えてもらって」と、涙。一昨年は決勝で王子谷に敗れ、準優勝。昨年は左ひざ半月板損傷のけがで欠場していた。覚悟は胸に表れていた。トレードマークの胸毛を近年はしっかりとそって臨んでいたが、今大会は柔道着の間からダンディズムがあふれていた。「そると生やすのに力を使っていると聞いた。そらないようにした。ワイルドでしょ」と、胸を張った。
100キロ級の選手の戴冠は、6年ぶり。“レジェンド”でもある井上康生、鈴木桂治という代表の監督、コーチからは「もう一度、100キロ級の選手の優勝が見たい」とハッパを掛けられていただけに「お2人に並べてうれしい」。五輪、世界選手権、全日本という日本における柔道3冠のうち2つを獲得。残る1つは来年に迫る大一番となる。「3冠柔道家になりたいです!」。平成最後の全日本王者ウルフが、令和の五輪に牙をむく。