ドーピングで繰り上げ銀 末続慎吾「秘めている誇りは変わらない」
08年北京五輪の陸上男子400メートルリレーで日本初のメダルを獲得した当時の日本代表(塚原直貴、末続慎吾、高平慎士、朝原宣治)が12日、銅メダルから銀メダルに繰り上がったことを受け、世界リレーの行われている日産スタジアムで行われたメダル授与式に参加し、銀メダルを受け取った。
北京五輪では優勝したジャマイカのメンバー、ネスタ・カーターが17年1月にドーピング違反で失格。同選手は処分を不服とし、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴していたが、18年6月に棄却された。これにより、国際オリンピック委員会(IOC)は同12月に順位の変更を確定させた。
セレモニーを前に会見に臨んだ4人は、明るい表情の中にも、ドーピング違反による繰り上げに複雑な表情を覗かせた。朝原氏は「気持ちを新たに、今日から銀メダリストとして生きていくことになる。銀メダルに昇格することは、私たちにとって喜ばしいこととして受け止めているが、やはりドーピングというルールをしっかり守るというスポーツの基本的なことを違反者がなくなるスポーツ界にしていきたい」と、心境を明かした。
また末続は「いろんな意味で、単純な感情ではないんですけど、複雑な感情も含めて、これから銀メダリストとして生きていく」と語った上で、きっぱりと言った。
「ただ、心の中に秘めている誇りは変わらない」-。
競技をしている上で、ドーピングをしている国があることは認識していた。「ドーピングというものに関してははっきりいえば、物心ついて、日本代表で走り出した頃からあった。それがない世界で走ってきたわけではない」とした上で、「頭の片隅に(他国でドーピングがあることを)分かった上でやっていた。そういう競技性が日本にはあると思って走ってきたからこそ、個人でもメダルを取れたと思う。そういうものをなしにして、埋めようとする力があったから、練習を考えたり、自分の力を使って、(世界の上位へ)到達していく力をつけて、初めて個人でメダルを獲れた」と、言葉に熱を込めた。
「ドーピングというプロセスの中でありたい姿でいこうとするのは、スポーツではない。スポーツはあくまで人がいて、ルールがあるからスポーツ。それを守れないものはスポーツではない」と、反ドーピングへの思いを口にした。