村上茉愛 腰痛で棄権…エース不在の緊急事態に世界選手権代表へ救済措置を示唆

 「体操・NHK杯」(18日、武蔵野の森総合スポーツプラザ)

 女子が行われ、18年世界選手権個人総合銀メダリストの村上茉愛(22)=日体ク=が、両仙腸関節症のため棄権した。最低条件だったNHK杯12位以内がなくなり、現在の規定では20年東京五輪の団体出場枠が懸かる今年の世界選手権(10月開幕・ドイツ、シュツットガルト)代表入りの可能性が消滅した。ただ、田中光女子強化本部長(46)は「不測の事態」とし、急きょ救済事項を提案することを示唆した。

 まさに“掟破り”といえるプランが浮上した。女子の大黒柱の村上が、試合直前の練習で腰痛を悪化させ棄権となり、現行規定で世界選手権代表入りの可能性が消滅。団体出場枠の懸かる大一番で、エース不在となる緊急事態に、田中強化本部長は異例の策を示唆した。

 「不測の事態。村上選手が出る出ないの影響を計算をして、もう一度理事会に提案する可能性がある。補欠か、(代表入り最低条件の)NHK杯12位以内というのを取り除くのか」。

 急きょとなる“救済条項”の追加。他競技において、世界選手権メダリストなどの実績のある選手が、怪我などの状況を考慮され、代表に選出されることはある。ただ、それも救済事項が明記されていた場合。すでに発表済みの選考要項を変更するとなれば前代未聞だ。特に体操は昨年、リオ五輪代表の宮川紗江がパワハラを告発した際に、透明性、公正性が問われたばかり。批判が噴出する可能性もある。それでも自国開催の五輪舞台に、団体として立てない事態は何としても避けたいという事情もある。田中強化本部長は「深く重く受け止めている。できるだけのことをして、なんとか枠を取りたい」と、神妙な面持ちで話した。

 団体枠獲得には、世界選手権ですでに出場枠を獲得している米国、ロシア、中国を除く上位9カ国に入る必要がある。昨年の世界選手権団体で、日本女子は6位。村上抜きでも米国、ロシア、中国を除いた9位以内に入れる可能性は十分にある。田中強化本部長は「苦しいですけど、枠は取れるんじゃないかと思う。しっかり取りこぼしのないように、安定感をつけたい」と“村上不在”の場合の戦略も思い描き、代表最年長の寺本明日香(ミキハウス)も「メダルは苦しいですけど、五輪の権利は大丈夫だと思う」と、話した。ただ、これ以上、主力に負傷者が出た場合は一気に崖っぷちに追い込まれる。

 現時点で代表入りの可能性がない村上は涙を浮かべながら「みんなが五輪出場権を勝ち取ってくれると信じている」と、祈るように話した。

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