貴景勝8日目から再出場 千賀ノ浦親方に出場を直訴 悪化させれば力士生命に影響も

 「大相撲夏場所・7日目」(18日、両国国技館)

 4日目の小結御嶽海戦で右膝を負傷し、5日目から休場した新大関貴景勝が8日目の19日から再出場することが18日、決まった。193キロ巨漢・小結碧山戦が組まれた。「右膝内側側副靱帯(じんたい)の損傷で加療3週間」の診断から4日での復帰に周囲は不安と厳しい声が相次いだ。大関以上で休場した同じ場所での再出場は2003年初場所、先代師匠となる横綱貴乃花以来。ケガを悪化させ再休場に追い込まれれば大関以上では昭和以降、初の不名誉となる。中入り後は一人横綱の鶴竜、関脇栃ノ心がともに勝ち、全勝を守った。

 再出場は難しいと見られていたが急転。17日の夜、貴景勝が師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)に出場を直訴。右膝の回復を確認し、親方も認めた。

 関節に注射を打ち、高圧酸素カプセルに入るなどし、16日の夜、急に痛みが引いた。この日、本人は姿を見せず親方が朝稽古後に説明。「足の曲げ伸ばしをやらしたけど無理して我慢してやってるようには見えなかった」と師弟で話し合いの末、決断に至った。

 本人は「自分の相撲が取れます。突き押しに徹した相撲を取る」と、話していたという。患部は専門家の指導の下、テーピングでがっちり固める予定だ。

 無謀か勇気か-。新大関の復帰を手放しで喜んではいられない。悪化させれば力士生命に影響しかねない。

 横綱審議委員会の元委員長で整形外科医の守屋秀繁氏(千葉大名誉教授)は前十字靱帯が損傷している可能性を示唆。「前十字が切れると少しずつ出血して痛くなる。だから翌日の朝、痛くなって休場を決めた」。

 さらに注射がステロイドホルモンだった場合、「一時的に痛みが取れるが靱帯を弱くする。治療の鉄則としてはよろしくない治療法。再休場もありうる」と警鐘。再出場の判断に「間違いだと思います」と私見を述べた。

 八角理事長(元横綱北勝海)は再出場に関し「うーん」と無言。阿武松審判部長(元関脇益荒雄)は「判断するのは本人と師匠。出るからにはいい相撲を取らないと」と求めた。ある親方は「覚悟を持って出るんだろう」と再休場は許されないと厳しい見方をした。

 大関では1951年春場所の汐ノ海以来68年ぶり再出場。大関以上では03年初場所の横綱貴乃花以来。くしくも先代師匠も同じく右膝負傷に苦しみ、この場所で引退した。

 千賀ノ浦親方は「痛みが走ったら休ませる」と言うが、昭和以降、再休場した大関、横綱はいない。悪化させ再休場となれば不名誉を刻むことになる。

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