サニブラウン9秒97!!桐生超え日本新 東京五輪メダル獲得へ…進化とまらない
「陸上・全米大学選手権」(7日、米テキサス州オースティン)
男子100メートルの決勝が行われ、サニブラウン・ハキーム(20)=米フロリダ大=が日本記録を更新し、日本人初の2度目の9秒台となるとなる9秒97(追い風0・8メートル)で3位に入った。17年9月に桐生祥秀(現日本生命)がマークした9秒98の日本記録を0秒01更新。100メートルから45分後に行われた同200メートル決勝では日本歴代2位の20秒08で3位に入った。400メートルリレー決勝では第2走者として今季世界最高となる37秒97での優勝に貢献。圧巻のパフォーマンスを連発し、規格外ぶりを見せつけた。
どこまで速く、そして強くなるのだろうか。サニブラウンは中盤から持ち前の伸びやかな加速で猛追。先に抜け出したライバルを歯を食いしばりながら必死に追った。
ゴールを駆け抜け、一瞬の間を置いて表示されたタイムは、日本記録となる9秒97。5月に出した9秒99を約1カ月でさらに更新し、陸上大国・全米の大学選手権で堂々の3位となっても、表情は悔しさを浮かべていた。
45分後に行われた200メートルでは日本歴代2位の20秒08で3位。100、200メートルとも上位2人は2歳年上。伸びしろを考えれば、日本の20歳のポテンシャルの高さは際だった。記録には「日本記録にあまり実感はない」と淡々。それでも「このレベルでレースをしてすごく楽しい。日本では滅多に体験できない。こっち(米国)に来て良かった」と自らが進んできた道の正しさを再確認し、笑った。
原石は日本の枠を超え、世界を知ることで磨かれた。17年はオランダで五輪金メダリストらと練習をともにし、秋にフロリダ大へ。「量と質、両方が高い」という練習で鍛え上げてきた。その走りはもはや世界基準。持ち味は身長188センチの体格を生かした走り。日本陸連科学委員会によると、2冠に輝いた17年の日本選手権はストライドが最大で246センチに達し、44・7歩で100メートルを駆け抜けた。17年世界選手権を9秒92で制したガトリン(米国)は44・1歩。世界トップにもひけはとらない。海外に出てウエートトレーニングを本格的に始めたことで、出力も増した。
17年から担当する五味宏生トレーナーは尻の筋肉の発達を指摘し「エンジンが大きくなっているのは確か。増えるところは増え、絞るところは絞れている」と驚く。課題の出足も改善。以前は大きな体をもてあましていたが、米国で自然に上体を起こす意識に変えると、滑らかに加速できるようになった。
「地上最速」を求める20歳にとって、日本最速の称号すらも通過点に過ぎない。「誰もが夢見る舞台」と語る20年東京五輪へ。右肩上がりの進化に、もはやメダルすらも夢物語ではなくなってきた。