貴源治が新入幕 入門6年半での昇進に「長かった。遅かった」
「大相撲名古屋場所」(7月7日初日、ドルフィンズアリーナ)
日本相撲協会は24日、名古屋場所の新番付を発表した。貴源治(22)=千賀ノ浦=が新入幕。栃木県からは02年の北勝力以来戦後4人目となる。名古屋市内で会見し、入門6年半での昇進に「長かった。遅かった」と複雑な思いを口にした。
今場所で十両復帰した双子の兄、貴ノ富士(千賀ノ浦)とともに大器と目されながら、1年半以上も十両を突破できなかった。「自分は上を見すぎた。ポンポンと上がるより課題を修正しながら来た。今は不安がない」と一歩ずつ力を付けた。
春巡業で幕内隠岐の海(八角)にかけられた言葉で吹っ切れた。「隠岐の海関から『上がりたいと思って勝ちたいと思ったら上がれないぞ。上がろうと思わずやることをやればいい』と言われた。先場所は攻めることしか考えなかった」と精神の安定が結果に結びついた。
発奮材料は大関貴景勝(22)=千賀ノ浦。年は1つ上ながら、入門は2年後輩。「精神的に人より大人だな。取り組む姿勢は勉強になる」と感心する。一方、番付で大きく差を付けられたのは屈辱。「負けたくない」と、早く追い付くつもりでやってきた。目標を問われると「優勝。優勝を狙っていく」と、強気に言い切った。
ビッグな発奮材料はもう一つある。今年のNBAドラフト1巡目(全体9位)でワシントン・ウィザーズより指名を受けた八村塁は同級生。兄・貴ノ富士とともに中学時代、バスケでしのぎを削ったライバルだった。
境町立境第一中では双子で茨城県選抜の主力選手となって全国3位。富山市の奥田中の主力だった八村とは中2時の静岡遠征で初めて出会い、試合をした。強豪高同士、意地のぶつかった激しい試合だったが、双子が八村を押さえて勝利した。
「ほとんど仕事をさせなかった」と貴源治は胸を張った。それでも、当時から身体能力は際立っていた。「あっちが背が高かったけど、それ以上に手足が長い。パス感覚が狂った思いがある」。中3になれば、体格も圧倒された。数ヶ月ぶりに再開した際には身長が5センチ以上も伸びて195センチ近くとなっており、舌を巻いたという。
双子は延岡学園高、土浦日大高バスケの強豪高校からスカウトも来た。試合を期に交流が深まった八村からは「一緒の高校に行こう」と誘われ、3人で高校の頂点を目指すことを熱望された。それでも両親の勧めもあり、相撲未経験ながら中学卒業し角界入りした。
貴源治は「中学時代は個人的にライバル視していた。バスケを続けていたら挫折していた」と苦笑い。違う道を選んだが同級生アスリートは何よりの刺激。「それぞれの道でそれぞれの道を極めていきたい」。競技は違えど出世争いで負ける気はない。