平尾誠二さんの右腕・中山光行氏が証言 “最速”で取り入れた「分析」
日本のラグビーを語る際に、欠かせない人物がいた。2019年W杯日本大会を心待ちにしながら、2016年10月20日に53歳の若さで急逝した平尾誠二さんだ。平尾さんと深い“絆”があった人物に話を聞いた。神戸製綱、日本代表で右腕コーチとして活躍した日本ラグビー協会の中山光行技術委員長(52)の話を通して、今なお生き続ける“ミスターラグビー”の思いを紡ぐ。
「今の主流となるラグビーの原型を、当時平尾さんが思い描いていたという感じはあると思うんですよね」
中山さんは、そう話す。神戸製鋼でプレーし、92年の引退後は平尾さんの勧めで、分析を担当した。その道を究め、日本代表や神戸製鋼で平尾さんの名参謀を務めた。
自チームや相手を分析し、戦術を立てる。スポーツ界で今や常識的な分析は、平尾さんが他競技も含めて早々に導入した。平尾体制で臨んだ99年W杯は全敗に終わったが、中山さんは「分析の面では日本は進んでいた」と証言する。
現在、日本代表の練習では、上空からドローンが撮影し、選手はGPSを装着してデータ収集を行う。平尾さんの先見的な考え方は、ハイテク化されて引き継がれている。
現日本代表のプレーに、中山さんは平尾時代の面影を見る。
「ボールタッチ回数や、日本人の良さである細かいパスを使いながら前進していくところは、平尾さんの考えと似ていると思います。外国人と日本人は“近く”という距離感が違う。平尾さんはいかに狭いところで技術を駆使して抜くかということを頭に置いていましたね」
平尾さんがつくった土台の上に、日本のラグビーはある。