復帰Vのリネールに脱帽…鈴木桂治コーチ「まだまだ壁厚かった」東京五輪へ危機感
柔道のグランプリ(GP)モントリオール大会を終えた日本男子重量級担当の鈴木桂治コーチ(39)が9日、カナダから成田空港に帰国。今大会男子100キロ超級で1年8カ月ぶりに実戦復帰し優勝した五輪2連覇中の“絶対王者”テディ・リネール(30)=フランス=について、「まだまだ壁は厚かった。もっともっと(差を)詰めていかないといけない」と、1年後の東京五輪に向けて危機感を口にした。
重量級復権が最大の課題である日本男子にとっては改めて強敵健在を突きつけられる大会となった。リネールは休養明けで体を絞り切れておらず、試合中に肩で息をするなど万全とはいえないコンディション。それでも、決勝で対戦したリオデジャネイロ五輪銀メダルの原沢久喜(27)=百五銀行=は延長戦の末、肩越しに背中を持たれての強引な大外刈りでなぎ倒されて力負け。リネールの国際大会での連勝は148まで伸びた。
原沢も世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)に向けての調整段階だったとはいえ、旧ルール下での指導差決着となったリオ五輪決勝では許していたなかった技によるポイント(技あり)も奪われてしまった。序盤は原沢が優位に戦っているようにも見えたが、指導2で後がなくなってからギアを入れて攻勢に出てくるリネールの試合巧者ぶりは健在。終わってみれば原沢に見せ場らしい見せ場はつくれず、試合全体をコントロールされていた印象だ。
ベンチで見守った鈴木コーチは「差はなかったが、勝てなかった」と悔しそうに述懐。「われわれが思ったよりは(スタミナが)へばってたし、体の動きも良くないのかなと見えた。原沢はぜひ勝っておきたいタイミングだった」と千載一遇のチャンスだったと振り返りつつ、「(原沢は)なかなか技も出せず、最後は向こうの馬力が上回った。(リネールの)組み手は相変わらずの厳しさがあったし、やっぱりパワーも感じた」と、最後には絶対勝ち切るリネールの総合的な強さに脱帽した。
1年後の東京五輪に向けて、やはり最大級にマークすべき標的の1人と再認識した様子だ。18年世界王者のツシシビリ(ジョージア)、階級を上げているリオ五輪100キロ級金メダルのクルパレク(チェコ)ら数々の強豪はいるものの、「リネールと当たるまでに(他の選手に勝って)決勝まで上がることを考えないといけないし、リネールにピンポイントで合わせた対策もしっかりやらないといけない印象がある」と鈴木コーチ。日本代表が誰になるかはまだわからないが、「(五輪本番で)誰に勝つためのということもしっかり考えて、試合を組み立てていかないと」と、この敗戦を強化の糧にすることを誓った。