リーチ主将、母の故郷フィジーに帰る テレビもねえ電話もねえけど報道陣を大歓待
原点といえる地から再出発だ。ラグビー日本代表フランカーのリーチ・マイケル主将(30)=東芝=は、優勝したパシフィック・ネーションズカップ(PNC)から一夜明けた11日、母イヴァさん(59)の故郷で、父コリンさん(62)が住むフィジー北部タブア村郊外の集落ニアトアレフを訪れた。親族ら約50人が集結して歓待。同行した報道陣も含め、電気も通らない地域が大にぎわいとなった。リーチ主将はフィジーで休暇を過ごし、18日からの網走合宿、そしてW杯に臨む。
大自然と親族に囲まれて、リーチ主将は、練習や試合では見せない穏やかな表情になっていた。「ここに来れば自然に触れられる。ラグビーも忘れます」とゆかりのある地で、次なる戦いへの英気を養うかのようだった。
フィジー北部の小さな村タブアから、車を内陸へ走らせる。途中で舗装道路はなくなった。電柱、電線もなくなった。未舗装道路に揺られて約40分、道は小川に遮られた。徒歩で川を渡って、山道を上へ20分。ようやく目的地に到着した。
今はニュージーランド・クライストチャーチに住む母イヴァさんの故郷であり、ニュージーランド出身の父コリンさんが17年以降住む集落。テレビもねえ、電話もねえ、車もそれほど…の世界。クライストチャーチ出身のリーチ主将が「子どもの時から来ていた」という場所が、ここだ。
愛息の“凱旋”試合を観戦した両親。コリンさんは「(観戦は)17年以来。いいゲームだった」と温和に話す。イヴァさんは「いいプレーをしていた。うれしく思います」と目を細める。
そのルーツに、日本との関わりがあった。リーチ主将は母方の祖父から聞かされた話を披露。太平洋戦争でパプアニューギニアに配属された際に「森の中で日本兵と出会ったけど、お互い逆の方を指さして別れた。人を殺したくなかったから」と話していたという。「日本との縁はそこから始まったと思う」と言う。
フィジーで休暇を取って、18日からの網走合宿に備える。あらためてW杯の目標を聞かれて「毎試合勝つ。それでいいかなと思い始めている」。原点に触れて、戦いの地、日本に赴く。