楢崎明智 兄・智亜に救われた 同組対決2本目…兄に先導されベスト更新!決勝進出
「スポーツクライミング・世界選手権」(19日、エスフォルタアリーナ八王子)
東京五輪と同形式の3種目による複合の男子予選が行われ、楢崎智亜(ともあ、23)、明智(めいち、20)兄弟=TEAM au=がそれぞれ3位、7位となり、上位8人によって争われる21日の決勝進出を決めた。藤井快(こころ、26)=TEAM au=が4位、原田海(かい、20)=日新火災=が5位で、日本勢は計4人が予選を突破。決勝で7位以内の日本人最上位選手は東京五輪代表に内定する。1枚の切符を巡り、兄弟を含めた、し烈な争いが繰り広げられる。
命綱よりも固く頼りになる兄弟の絆が、五輪切符の懸かる大一番で悩める弟を救った。
最初の種目のスピードは、くしくも兄弟同組。1本目、6秒台中盤を記録した智亜に対し、明智は中盤で足を滑らせて7秒台後半で下位に沈んだ。もうミスができない2本目。極度の緊張に陥った弟に、兄は言った。「大丈夫だから。いつも通りやればいい」-。冷静さを取り戻した明智は、先行する兄に先導されるように軽快に壁を登り、自己ベスト6秒776をマーク。流れをつかみボルダリングは5位、リードも10位にまとめ、3位通過の兄とともに決勝に進出。「智くんがいなかったら、メンタルがやられていたかもしれない」と感謝した。
対照的な兄弟だ。身長は170センチながら圧倒的なフィジカルとクライミング感覚を武器にすでにトップクライマーの兄と、186センチの身長、195センチに及ぶリーチを武器にする未完の大器の弟。目標は兄弟五輪。決勝ではまず1枚の夢舞台の切符を懸けて兄弟で争う。
明智は「智くんは強いので」と苦笑いし「日本人2位以内を狙っていきたい」と控えめに意気込み、智亜は「課題によっては結構食い込んでくるんじゃないか」と弟を警戒しつつ「自信はある」と、キッパリ宣言した。仲良し兄弟が決勝の1日だけ、仁義なき戦いを繰り広げる。