八村は「国際試合を経験したら、もっと伸びる」 恩師原田氏が語る教え子への期待
「バスケットボール男子・W杯・1次リーグ、日本-トルコ」(1日、上海)
バスケットボール男子W杯が8月31日に開幕し、日本は1日に初戦トルコ戦を迎える。自国開催だった06年以来13年ぶり、自力での出場は21年ぶりとなる大舞台。中心はNBAウィザーズの八村塁(21)だ。奥田中時代に指導した坂本穣治コーチが師と仰ぎ、約4時間かけて富山に通って指導したのが、現在大阪府バスケットボール協会の名誉会長で、元女子日本代表監督の原田茂氏(74)だ。攻守にスピードを生かしたプレーが光る馬場雄大(23)=A東京=も同中出身で、影響を受けた指導者に原田氏の名を挙げる。2人の代表選手の恩師がW杯への期待を語った。
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「八村が言うでしょ。アメリカでもやるのは『中学と同じ練習』って。基礎は共通。僕が教えるのはどう考えてどうやるか。みんな最初は首をひねるけど、練習するうちにできるようになるんだよ」
八村がNBAから指名された日、涙を流して喜ぶ坂本コーチの姿があった。その坂本コーチが熟読した指導本の著者が原田氏。育成年代の指導のため、担当となった北陸ブロック・富山に訪れた際に坂本氏から懇願され、原田氏は約18年前から北陸に、奥田中に指導に行くようになった。
八村に対する第一印象はこうだ。「初心者だけど素直。ドリブルもできなかったけど、ピュッとボールをつかんだ。身体能力、ボールに対する感覚や感性はものすごくあった」
練習では特別難しいことはしない。例えば、まず単純に全力ダッシュをさせる。次にドリブル。同じスピードでできる選手は、最初はほぼいない。
バスケットは「物理や数学、空間力学」と考える。コートに味方は自分以外の4人、敵は5人。どのコースを走るべきか、どこを優先して守るべきか。最適解はある。状況を見て、答えを導く道筋を示し続けてきた。
大きな選手をゴール下に配置する“鉄板”は御法度。「大きい子も小さい子もみんな同じ教え方」。八村にもボール運びやPGの練習をさせた一方、中学からダンクシュートにもトライさせた。時には日の出前の早朝5時から練習し、授業後また体育館に集まった。
八村は要領がよく、かわいがられるキャラクターというが、サボり癖があり怒られることも頻繁だった。「ニタッと笑ってごまかすから『あかん!やり直し!』ってよく言っていた」と懐かしむ。ただ「教えたらすぐにやる」というひたむきさと「素直な性格」は何よりの武器だった。
日本バスケ史に残る選手になろうとしている愛弟子を「運もあるだろうし、持って生まれた天分だろう」と原田氏は言う。「ずーっと伸び続けてる。ここで国際試合を経験したら、もっと伸びると思うよ」。日本にとっては挑戦となるW杯。大舞台で八村はさらに化けるかもしれない。