【記者の視点】柔道世界選手権 金減少も「希望」みえた銀6個

 決勝でノエル・ファントエント(上)に敗れ、畳に寝転がる向翔一郎=8月29日(共同)
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 柔道の世界選手権が1日まで日本武道館で行われ、開催国の日本は個人戦で4個の金メダルを獲得した。18年の7個からは3つ減らしたものの、男子73キロ級の大野将平(旭化成)や女子52キロ級の阿部詩(日体大)らは圧倒的実力を誇示し、東京五輪への期待を高めた。一方、注目すべきは決勝で敗れた6個の銀メダル。紙一重で敗れた階級、力の差を見せつけられた階級とさまざまだが、代表争いを含めた1年後の戦況を占う上でも今大会を振り返りたい。

  ◇  ◇

 あと一歩で勝てない-。9年ぶりの自国開催だった世界柔道を見てそう感じた人も多かったのではなかろうか。14階級中10階級で進んだ決勝で日本勢は4勝6敗。ただ、金野強化委員長が「課題は見えたが(全階級)ある程度収穫がつかめた」と総括するように、6個の銀メダルにこそリオ五輪(3個)から大幅に金メダルを増やすための希望も見えた。

 限りなく金に近い戦いをしたのが女子63キロ級の田代未来(コマツ)で、過去1勝8敗のアグベニェヌ(フランス)の攻め手を封じながら戦い、11分超の死闘であと一歩まで追い詰めた。怪力女王に「人生で最も激しい試合だった」と言わしめるほど肉薄し、増地監督も「差はなくなってきている。次は絶対勝てる」と勝算を立てた。

 男子90キロ級の向翔一郎(ALSOK)は最も評価を上げた1人。強引に攻め急いで返される悪癖を我慢した結果、ここぞの爆発力が浮かび上がった。決勝は惜敗したが、井上監督は「コンスタントにこの戦いができれば」と“条件付き”ながらも金の可能性を示唆。代表争いも一歩リードしたのは間違いない。

 再建が課題の男子100キロ超級にも光が見えた。決勝こそ王者クルパレク(チェコ)に反則で惨敗したが、原沢久喜(百五銀行)は前王者トゥシシビリ(ジョージア)に一本勝ちするなど地力の高さを証明。「大砲を撃ち合うのではなく機関銃でバンバン打ち合うようになった」と井上監督が例えるように、スピード化が進む重量級新時代の旗頭2強と渡り合えたのは収穫。不在の絶対王者リネール(フランス)を含めた覇権争いに名乗りを上げることはできた。

 元女王の渡名喜風南(パーク24)、芳田司(コマツ)、浜田尚里(自衛隊)も決勝までは進む地力は示しただけに強力なライバルへの対策が課題だ。団体戦で雪辱した浜田が示したように、反省を生かし再戦すれば勝てる可能性も秘めている。

 早期に敗れた高藤直寿(パーク24)、ウルフ・アロン(了徳寺大職)、新井千鶴(三井住友海上)も元世界王者で巻き返しは必至。東京五輪に向けて楽観視はできないが、決して悲観することはないと思える8日間だった。(デイリースポーツ・柔道担当・藤川資野)

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