五輪暑さ対策の人工雪、効果は?気温変わらず 組織委「楽しんでいただける」もコスト非公表
2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は13日、東京・海の森水上競技場で開催しているカヌー・スプリントのテスト大会で、観客向けの暑さ対策として人工降雪機を使った実験を行った。観客席に向けて5分間、合計300キロの氷を砕いたものを降らせたが、気温、暑さ指標(WBGT)ともに前後で変化はなし。今回の結果を検証した上で、他会場も含めて本番で導入するかどうかを検討するという。
観客席に座る組織委職員ら約160人の頭上に“季節外れ”の白い雪が舞った。異様な光景に参加者は一様に笑みを浮かべたが、気温は実験前後で25・1度と変わらず。ただ、参加した職員からは「清涼感があった」との感想が聞かれたといい、組織委MOC統括部長の岡村貴志氏は「空気全体を冷やすものではなく(肌に)直接当たって清涼感を与えるものだと理解している」と結果は想定内であるとの見解を示した。
来夏想定される猛暑に対し、組織委は今夏集中的に行った各競技のテスト大会で大型冷風機や日よけテントを設置するなど数々の対策を施してきた。雪を降らせるというアイデアは8月中旬に新たに浮上したといい、岡村氏は「組織委としてはできることは全て試してみる」というスタンスを強調。今回使用した人工降雪機は野外音楽祭やCM撮影などで使われるものだったが、岡村氏は「お客様に(大会を)楽しんでいただける1つのイベントとしてもいいのでは」と“副次的効果”も示唆した。
ただ、服や荷物がぬれる、水でぬれた階段で報道関係者が転倒するといったアクシデントや、降雪範囲が半径15メートルしかなく、風で雪が押し戻されるなどの不具合も見られた。岡村氏は「費用対効果も含めて考えていく」と話したが、その判断材料となる降雪機1台当たりのコストは非公表。暑さ対策としての効果は未知数な中、「清涼感」にどれだけの費用を掛けるのかは不透明だ。
今回の実験を受け、組織委大会運営局会場サービス部長の松本智明氏は「個人的には」と前置きした上で「(降雪機の使用は)ありだと思う」と前向きな見解を示した。ただ、実際に本番でも人工降雪機を使用するかどうかは、あらゆるリスクや、使用するのに適切な会場があるかなど多角的に検証するという。しかし、導入可否の判断基準は「決め切ってはいない」(岡村氏)。現状では変化が見られなかった気温と、参加した職員らの声を材料に議論するしかなさそうだ。