鈴木雄介が競歩界初の金メダル!東京五輪代表内定 涙ぐみ「感謝」過酷レース冷静に給水
「陸上・世界選手権」(28日、ドーハ)
男子50キロ競歩が行われ、日本記録保持者の鈴木雄介(31)=富士通=が金メダルを獲得し、同種目の東京五輪代表に内定した。五輪、世界選手権を通じて日本勢初の競歩種目での金メダルとなった。
スタートからすぐに先頭に立ち、積極的なレースを展開した。9キロ過ぎからは後方から追いかけてきた世界記録保持者のヨハン・ディニズ(フランス)とともに歩く形。10キロ過ぎにディニズがトイレに向かい、差を広げ鈴木の一人旅になった。その後、ディニズは途中棄権した。
26日の会見で「サウナで練習している感じ」と鈴木自身も驚いていた高温多湿な厳しい天候で、次々とレースを中止する選手が出る中、鈴木はペースを守り続けた。45キロ地点で2位の選手に2分5秒差をつけ通過。ラストはビエイラ(ポルトガル)に猛追されたが、リードを守った。
レース後は疲労から立ち上がれなくなってしまうほどのタフなレースを勝ちきった。スタートリストにある46人中、完歩できたのは28人だった。回復後、報道陣の取材に応じ、「疲れ切りました。(金メダルの)実感はないです。ゴールするのに必死でした。ゴールできて良かったという安堵感があった」と振り返った。
レース終盤の給水では、あえて立ち止まった。2分から3分のリードがあったとはいえ、勇気のいる決断だったが、「脱水になっているのは分かっていたので、給水しなきゃいけなかったんですけど、歩きながら飲むのはきつかった。戦略的な給水。一回止まってでもしっかり給水して歩こうと」と冷静に考え、実行した。
股関節の痛みなどにより、リオ五輪を断念せざるを得なくなるという苦しい時期を乗り越えた。「ここまで来るのに2、3年、競技できない状況もあって、自暴自棄になったこともあった。リハビリするべき時に、そこもできなかったり。ここに戻してくれたすべての人達のおかげで、ここにいる。感謝したい」と涙ぐみながら感謝した。
世界選手権で日本人が金メダルを獲得したのは、1991年東京大会・男子マラソンの谷口浩美、93年シュツットガルト大会・女子マラソンの浅利純子、97年アテネ大会・女子マラソンの鈴木博美、2011年大邱大会・男子ハンマー投げの室伏広治の4人だった。