京大卒の異色ウオーカー・山西利和がV 50キロ鈴木に続き日本勢初1大会複数「金」
「陸上・世界選手権」(4日、ドーハ)
男子20キロ競歩が行われ、京大工学部卒業の“知性派ウオーカー”山西利和(23)=愛知製鋼=が1時間26分34秒で同種目では日本勢初の金メダルを獲得し、東京五輪代表に内定した。50キロの鈴木雄介に続く世界一。日本勢が1大会で複数の金メダルを獲得するのは初めてで、通算は6個となった。
その頭脳がはじき出した“最適解”はやはり間違いではなかった。
序盤スローペースで進む中、7キロ過ぎから飛び出した山西。「もちろん怖かったです。ただ、あそこで逃げたら何も伝わらない。そこに立ち向かわないと」。恐怖心と戦いながらも、そのまま絶妙なペースを刻み続け、2位との差を12~17秒でコントロール。消耗戦に持ち込んだ。気温32度、湿度80%超えの過酷な環境下。「キツかった。ズシンとお腹にくるものがあった」というサバイバルレースを制圧し、これまで日本勢はメダルもなかった20キロ競歩で堂々と頂までたどり着いた。
ただ、ゴール後、笑顔は控えめだった。「うれしい気持ちと、ホッとする気持ちと、まだちょっとやり切れない気持ちもある」。それは自らに求めるものがもっともっと大きいからでもある。京大在学時から京大ウオーカーとして注目を集めてきた。“頭”に話題が及ぶことは本意ではなかったが実業団に入り、「陸上選手として、フラットに考えた時に、そこは僕の一つの強み」と思えるようになった。今は競歩を通じて、何を伝えられるか。そんな思いが歩く理由になっている。金メダルにも「もっと圧倒的に勝たないと。偶然逃げ切れただけ」と、納得はしなかった。
これで東京五輪代表に内定した。京大卒のオリンピアンとして、さらなる注目を集めることになるが、「田島直人さん(1936年ベルリン五輪男子三段跳び金メダリスト)がいる。僕は二番煎じです」と、笑った山西。ただ、「本体」と話すメガネの奥の瞳には、野心の炎がともっていた。