札幌移転で日本陸連失態 選手の声届けず 意見集約も内部認識にズレ IOC未提出
日本陸上連盟の強化委員会は5日、都内で東京五輪のマラソン、競歩会場が札幌に移転したことを受けて会見した。10月中旬に国際オリンピック委員会(IOC)のトマス・バッハ会長が強権を発動し、札幌移転を決定。小池百合子都知事などが反発したが、1日まで行われたIOC、都、国、組織委による調整委員会で都も受け入れ、正式に決まった。ただ、日本陸連強化委が集約していた選手、監督などの“現場”の意見が、事務局との“誤解”によって調整委に届けられていなかったことが判明した
瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、「選手の意見は届けなかったのか?」という報道陣の問いに「意見集約はして、陸連の事務局には提出した」と説明。河野匡ディレクターによると、事務局の要望で強化としての意見を集約。調整委員会までに提出した。「現場の声をメールで集めた。どう使われたかは分からない。(事務局から)レスポンスがなかった。当然、調整委に提出されるものと思っていた」と、話した。内容は世界の選手の意見を反映させること、また日本人のマラソンへの思いだったという。
ただ、意見を受け取った風間事務局長は「調整委に出すために受け取ったとは認識していない。誤解があったと思う」と、認識にズレがあったことを釈明。意見は日本陸連の横川会長に提出したとしたが、それでは日本陸連内に止まっていたことになる。調整委に日本陸連からの出席者はいなかったが、JOCの山下会長らが出席しており、なんらかの形で働きかけができた手段はあったはずだ。
先月16日のIOCバッハ会長の発表からこの日まで、日本陸連が立場を表明することはなかった。会見でも麻場強化委員長が「今日は強化委としての会見」と強調するなど陸連内でも温度差があったのは間違いない。同事務局長は「反省もあるがIOCは我々より大きな考えで決定している。それに準じていくのが我々の立場」と説明したが、河野ディレクターは「(現場の声が)届いてなかったなら、無念」と、やりきれない思いを吐露した。