阿部一二三が復活V きょうだい五輪出場へ残った!勝てば内定・丸山を撃破

 「柔道・グランドスラム大阪大会」(22日、丸善インテックアリーナ大阪)

 東京五輪代表選考会を兼ねて行われ、男子66キロ級は17、18年世界王者の阿部一二三(22)=日体大=が、決勝で19年世界王者の丸山城志郎(26)=ミキハウス=を延長の末に優勢で下し、丸山の東京五輪代表内定を阻止。きょうだいでの五輪出場へ望みをつないだ。女子52キロ級で世界選手権2連覇の阿部詩(19)=日体大=は決勝で世界ランク1位のアマンディーヌ・ブシャール(フランス)に延長で優勢負けし、代表内定を逃した。

 阿部一二三が男を見せた。負ければ東京五輪が絶望的となる背水の一戦。3連敗中だった丸山との果たし合いを制し、代表争いで生き残った。「絶対に引かない、何が何でもやってやるという気持ちで挑んだ。苦しい悔しい思いもたくさんしたが、今はうれしい気持ち」。左手のガッツポーズで大歓声に応えた。

 この1年で4度目の対戦はまたも延長戦の死闘となった。阿部が担ぎ技、足技を狙えば、丸山も内股を繰り出す。それでもとにかく前に出続けた阿部は、審判が「待て」をかけても気づかずに技に入るほど、目の前の相手を倒すことに集中していた。「気持ちでは絶対負けない」。決着は7分27秒。相手が技に入ろうとしたところに合わせ、執念の支え釣り込み足で転がした。

 3連敗は全て接戦での競り負け。今夏の世界選手権も序盤リードしながら丸山の気迫に押されて後ろに下がった。「何でだ?って。やっぱり気持ちの部分」。17、18年世界選手権を連覇し、東京五輪出場は確実視されたが、無意識に守りに入る気持ちも生じた。そんな折に丸山の大反撃を受け、逆に追う立場となった。「自分が積み上げてきたものは簡単に崩させてはいけない。もう一度積み上げて、東京五輪に出場して優勝したい」。くすぶっていた思いをぶつけるように、攻撃柔道に原点回帰した。

 励みになったのが妹の存在だ。五輪切符に近づいている詩とはトレーニングなどで一緒になる機会も増え、「妹を見ることで悔しさがバーって上がって、すごく燃えた」。兄がどれだけ劣勢でも、詩は「お兄ちゃんが一番強いと思っている」と公言し続けてくれた。「妹には絶対負けていられないという思いでやれた部分もあるので感謝したい。2人で東京五輪代表を手にし、きょうだいで金メダルを取りたい」。改めて思いを強くした。

 昨年の世界選手権以来の優勝で東京五輪への望みをつないだが、日本男子の井上康生監督が「丸山がリードしていると言っていい」と強調するように、ライバルを追う立場であることには変わりない。阿部は「まだまだこれからだが、この勝ちを絶対に生かしていきたい」。大逆転へ険しい道のりは続くが、反撃態勢は整った。

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