選考混乱の中、クライミング代表が五輪予選へ すでに五輪消滅の可能性も人事尽くす
東京五輪で新採用されるスポーツクライミングの日本代表が25日、五輪予選(28日開幕・フランス、トゥールーズ)に向けて羽田空港から出発した。同競技の五輪選考においては現在、日本協会が解釈を巡り、国際連盟をスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴している状況。国際連盟の解釈では8月の世界選手権の結果により、日本は男子2人、女子2人とも代表が決定しており、今大会に出場する日本選手が仮に規定の6位以内に入っても出場枠を獲得できない可能性がある。
CASの判断はまだ出ておらず、選手たちは複雑な状況下での出発となった。男子の藤井快(26)=TEAM au=は「最初聞いた時は正直、悩みました。どうなるか分からないし、何のために練習しているのかなと。不安はあった」と明かした。ただ、今は目前に迫った試合に全力を尽くすだけ。「今は割り切ってます。どういう結果でも優勝を目指す。そこは変わらない。優勝のリザルトがあれば、来年に向けて前向きになれる」と、うなずいた。
すでに兄の智亜が世界選手権金メダルで代表に内定している楢崎明智(20)=TEAM au=は「最初に(選考の混乱を)聞いた時はシーズンの疲れもあって、頑張れるかな?と思ったんですけど、智くんとか周りの人に支えてもらって、今は前向きになっている」と、話した。
国際連盟の解釈ではすでに代表に入る権利はなく、目標だった“兄弟五輪”は消滅していることになる。ただ、「1番最初に聞いた時に安心しちゃったんです」と意外な告白。「(国際連盟の解釈では代表に決まっている)海くん(原田)もめちゃくちゃ強いので。納得してしまった」という。その後、そんな自分に怒りを覚えた。「後から考えると、それは負けを認めているということ。今は(五輪に)出たいという気持ちが強い」と、前を向き、大一番に挑む。
女子の森秋彩(16)=茨城県連盟=も「今まで五輪に向かって頑張ってきた。それが急に途絶えたら残念だなと。今まで何をしてたんだろうという気持ちになった」と率直に明かした。それでも母から「五輪で出れても出れなくても、クライミングを楽しむ気持ちは変わらない。五輪に出るために始めたわけではないでしょう?気にしなくていい」と声を掛けられ、気持ちは切り替わった。伊藤ふたば(17)=TEAM au=も「気持ちの整理はできている。優勝したい」と、前向きに語り、機上の人となった。