羽生結弦と一問一答 4回転半挑戦の背景「正直絶望」から「何か爪痕を残したい」へ

 「フィギュアスケート・GPファイナル」(8日、トリノ)

 エキシビションが行われ、五輪2連覇の羽生結弦(25)=ANA=は「ノッテ・ステラータ(星降る夜)」で、会場を魅了した。演技前に取材に応じ、羽生の夢であるクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)を3月の世界選手権で投入するプランがあるとし、6日の公式練習で、公の場で初挑戦した裏にあった思いも明かした。

 主な一問一答は以下。

 -一夜明けて。演技を振り返って、満足感や悔しさは。

 「まあ、いろんな気持ちはやっぱりあります。正直言って、この構成にできればなりたくなかったんですけど。一応練習しといてはよかったなって思いますし、この構成を練習した回数と言ったら、多分通しは1回ぐらいしかできていないし。もちろんノーミスはできて…まあアクセル、アクセルにはするつもりはなかったですし、トー、フリップでやるつもりも全くなかったですけど、一応ノーミスはしていたので、頑張れるとは思ったんですけどね。ただ、うん、やっぱり試合は大変だったなとも思いましたし。あと、(少し考え)4回転ループと4回転ルッツが跳べるようになったというのはすごく大きな1歩だったと思うと同時に、やっぱりもっとつなぎの部分だったり、音楽だったり、表現だったり、そういったものをやっぱり…。何て言えばいいんですかね、感じて、スケートしないと、なんか…。自分がスケートをやってて腑に落ちないなって昨日考えながら夜を過ごしました」

 -アクセルの完成度を見せてもらいました。

 「すみません。全然完成してないんですけど(笑)恥ずかしい」

 -世界選手権あたりにはというプランはありますか。

 「はい。頑張ります。そのつもりで」

 (そのまま続けて語り出す)「本当は…。正直な気持ちを言ってしまうと、SPが終わった後に割と絶望していて。やっぱりサルコーと4回転トーループのコンビネーションの構成で、オトナルがあまりにもはまらな過ぎて、ずっと。何ではまらないんだろうってひたすら考えてたんですけど。まあでも13点差というのは、なんて言うんですかね、ジャンプ1本増やしたからとか、4回転にしたからと言って縮まるものじゃないっていうことはすごく分かってましたし、彼自身も5回跳んでくるだろうなっていうことはすごく分かっていましたし、こんなプレッシャーでは絶対につぶれないっていう強さをすごく感じてもいたので、やっぱり難しいなって感じはありました。だからこそここで何か爪痕を残したいっていう気持ちがあって。うん。いろいろ考えたんです。何か、何で今回コーチが来られなかったんだろうとか。どうしてSPでミスしてしまったんだろうとか。あんまりそういう運命主義者ではないんですけど、僕は。でも、何かしらの意味がそこにあるんだろうなって考えて。で、もしそこに意味があるんだとしたら、ストッパーがいない今だからこそ、自分だけで決められる今だからこそ、ここでやってもいいんじゃないかなってちょっと自分を許してしまって。だからある意味…あの、4Aの練習をすること自体が1カ月以上やってなかったと思うんですけど、スケートカナダからNHK杯の間も1、2回しかできなかったですし。もちろんNHK杯からこちらまでは無理でしたし。それでもやりたいってやっぱり思ったのは、ここで何かしら、何かを残したいって風に思ったからであって。結果として跳べなかったですけど、あの練習はかなりいろんな覚悟を決めて。やっぱりアクセルの練習をするのは、毎回そうなんですけど、いろんな覚悟は決めていて。やっぱり回転がまだ足りきってないジャンプの方が多いので、いつどこか痛めてもおかしくない着氷だったり転倒をするってのもリスクはありますし。あとは、試合の公式練習だからこそ気合が入りすぎて、やっぱいつもより浮くだろうって。そうなった場合に、やっぱり前にケガした時と同じ状況になって、大きなケガをしてしまうリスクがある。もちろんこの時期にケガしてる確率も高いので、そういう意味でも怖いなって考えました。あとは最後は、ほぼ試合を捨てるような覚悟でいってるんですよね。ここで無理をして力を出し切ったら、フリーまで持たないのは分かっていたんです。調整はしないといけないはずなのに、SPでも跳べなかったくせに、そこでやるっていうことは、そこは捨てるという言い方はふさわしくないかもしれないですけど、試合ごとそこに懸けるぐらいのつもりで、そのアクセルの練習に懸けるぐらいのつもりで、やらなきゃいけないっていう、なんか、覚悟があったので。そういう意味でもいろんな覚悟をしながらこの試合過ごせましたし、先ほど誕生日のお祝いもしていただけましたけども、なんかそういう意味でもやっぱ、ここは一生に1度しかない所ですし、僕自身もここの舞台がきっかけでいろんなことが回って。スケートができて。憧れの地になって。オリンピックで優勝できてって全てがつながってきているので。跳べはしなかったですけど、ある意味ここがまた自分にとってのきっかけの地になったかなと思います。すみません、長くて」

 -ジスラン・ブリアン・コーチが一緒なら、アクセルの練習はしなかったのか。

 「しなかったですね。多分止められたと思います、やっぱり。何が大事なんだって話になった時に、絶対に試合の方が大事なので。それは自分でも分かっていたんですけど、でもこの絶望的な状況の中で、ここで何かを残さないといけないって使命感がすごくあったんですね、それは前に言っていた理想の形の幼いころの自分が見た時に、それを胸張って、自分がここで何かをやったかって言われたら、多分試合だけに合わせてたとしても、どっちにしろあの構成で完璧なノーミスをすることは多分不可能に近かったと思うんですよ。多分10%もなかったと思うんですよ確率的に。それに懸けるんだったら、それに懸けて勝てないのだったら、だったらここでちゃんとやるべきことやろうよって。その中で思ったのは、自分の中でやるべきことはここで4ルッツをしっかり跳びきることだったし、ここでアクセルを完成させたいって気持ちでした」

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